優秀な学生がコンサルに流れちゃう問題

 もうひとつ日本の大きな問題は、研究職や博士課程へのインセンティブがほとんどないこと。だから、結果的に優秀な学生がみんなコンサルに流れちゃうんですよ。

 別にコンサルが悪いとは言わないけど、「研究で未来を変える」「技術で社会を変える」「公共に貢献する」といった選択肢を十分可能にする報酬が用意されるべき。そのためには、博士課程への支援や研究職への投資を圧倒的に増やす必要がある。日本は博士課程への投資が先進国の中でもかなり低水準になっていて、それも技術やイノベーションが生まれにくい理由のひとつだと思います。

 つい最近、博士課程の学生への生活費補助を「日本人に限定、留学生は除外する」という制度変更の方針が出て話題になっていましたけど、ベクトルが違うんじゃないかなって思いました。日本人の進学者が少ないから外国人が多くなってるだけで、優秀な人が来て研究してくれるなら、国籍なんてどうでもいい。むしろ歓迎すべきじゃないですか。

 日本人の博士課程進学者が減っている見逃せない課題があるのに、「外国人に出し過ぎだ」にばかり注目するのは違うんじゃないかな。

日本人ファーストってなんだ?

「外国人が多いのは問題だ」みたいな空気で縛るのって、ただの「見せかけの日本人ファースト」でしかない。そういう視野の狭い議論をしているから、日本の技術力がどんどん埋もれていく。そんな状況で、誰がわざわざ博士課程に行くのかって話ですよ。

 博士課程に関しては特に、国の技術力を担うような超頭のいい人たちがいるわけで、彼らに気持ちよく社会に貢献して貰えるような環境を作らないといけないと思います。

 それは研究者に限らず、政治家や官僚にも言えると思う。「給料は少ないけれど使命感だけで頑張ります」なんて働き方、続くわけがない。このままじゃトップ層はどんどん海外に流出するだろうし、あるいは能力を発揮できないまま終わってしまう。日本の未来に対して、普通の労働者とも違い、少し声を上げにくいであろう彼らの働き方もしっかり考えていくべきじゃないかなと思います。

なぜ日本のエリートは「医者かコンサル」を選ぶのか?岸谷蘭丸の答えが火の玉ストレートで何も言えない岸谷蘭丸(きしたに・らんまる) 実業家・インフルエンサー。2001年7月7日生まれ、東京都出身。幼い頃に小児リウマチを発症しながらも治療を経て回復。中学受験を経て入学した早稲田実業学校中等部卒業後、渡米してニューヨークの高校へ進学。1年で単位を修了してプリンストンの高校に編入。大学受験では米・フォーダム大学に合格するも、浪人をすることを決意。翌年イタリア・ボッコーニ大学に進学。2021年に「柚木蘭丸」としてSNS活動を開始し、2024年に俳優・岸谷五朗、ミュージシャン・岸谷香の長男であることを公表。本名での活動に切り替え、TBS『Nスタ』や『ABEMA Prime』などでコメンテーターを務める。2023年には友人とともに海外大学受験支援サービス「MMBH留学」を設立し、英語指導や出願支援を展開、教育事業にも注力している。 Photo by Shogo Murakami