温度計だけ見てても、ええ魚は釣れへん
「ええか、日経平均はあくまで“市場の雰囲気”を知るための温度計みたいなもんや。市場全体が盛り上がってるか、冷え込んでるかを知るには便利やけど、それだけ見て株を買っても儲からへん」
シゲルさんは、新しいお茶を一口すすってから続けた。
「本当に大事なのは、その会社がこれから伸びるかどうか、その価値を見極めることや。個人投資家が勝負できるんは、そこやねん」
「お買い得な株」を見つける醍醐味
「価値、ですか……」
「そうや。たとえば、君がよう着てるユニクロ。なんで人気がある?着心地がええからか?値段が安いからか?それを考えるのが第一歩や。ファーストリテイリングの株価は、そういった消費者からの支持や、今後の海外展開への期待なんかが織り込まれて決まる」
「なるほど……」
「世の中にはな、本当はすごい技術を持ってるのに、まだみんなに気づかれてへん“お買い得”な会社がぎょうさんある。さっきのディスコみたいにな。そういう会社を自分で見つけ出して投資するのが、株式投資の最大の醍醐味や。宝探しみたいなもんやな」
君も「会社のオーナー」になれるんやで
僕が感心していると、シゲルさんはニヤリと笑った。
「それに、株を買うっちゅうのはな、ただの金儲けやないで。その会社の一部を所有する、つまり“オーナー”の一人になるっちゅうことや」
「僕が、オーナーに?」
「せや。君が『この会社は将来伸びる!』『この商品を応援したい!』と思った会社に投資する。そして、その会社の成長が、君自身の資産の成長に繋がるんや。自分が応援した会社が大きくなって、世の中の役に立っていく。それを見届けられるのも、株主の特権やで。銀行に預金してるだけやと、金はただの数字やけど、株は違う。経済に参加してるっちゅう実感を得られるんや」
これまで縁遠いと思っていた株式投資の世界が、急に自分自身の生活や社会とつながっているように感じられ、僕はゴクリと唾を飲んだ。
※本稿は、『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。











