アプリを「作る人」と「使う人」の境界が消えた
エンジニアではない社員がアプリを作るとなると、「質の低いアプリが乱立するのでは」「アプリのメンテナンスはどうするのか」という懸念が浮かぶ。
「Accenture Peer Worker Platform」では、誰でもアプリを作成できるだけではなく、他の社員が作ったアプリをより使いやすくアップデートすることもできる。また、時間を空けてアプリストアを覗くと、本当に役立つものだけが生き残り、使われないものは淘汰されているという。
社内外でAI活用を推進する同社プリンシパル・ディレクターの矢野一路氏によると、このシステムがもたらした最も大きな変化は、「アプリを作る人と使う人の境界がなくなったこと」だという。従来の社内アプリ開発では、作る人と使う人で明確に分かれていた。作る人はみんなのためを思って作るのに、使う人は十分なフィードバックもなく、ただ「イマイチ」と言う。その結果、作る人が疲弊していく悲しい構図も少なくなかった。
「誰もがアプリの作り手となり、同時にユーザーとなる。『自分はソースコードが書けないからできない』という免罪符は、もはや通用しない。厳しくもフェアな世界が現実のものとなっている」(矢野氏)

矢野氏は、「まずは自分たちがAIを使いこなせないと、今後のビジネス成長につながらないという危機感がある」と明かす。同社では有志の生成AIコミュニティや勉強会の実施に加え、AIを使っていないメンバーがいれば、上司が活用を促しているという。
提案資料のベースもAIが自動生成
コンサルタントのお家芸である提案資料も、AIがベースを自動生成してくれる。アクセンチュア独自の提案資料生成ツール「Accenture Presentation Deck Agent」は、市場動向やクライアント企業の課題、ソリューション比較、スケジュール表といった提案書に必要な要素をワンクリックで生成。さらにAIとの対話で内容を洗練させていく。
社内の資料共有も様変わりした。従来なら「資料を共有して」だったのが、今では「どんなプロンプトを入れたか」を共有している。受け手はプロンプトを書き換えるだけで、自分の案件用に提案資料をカスタマイズできる。
重要なのは、AIがたたき台を作ることで、人間のコンサルタントが「変革」に集中できるようになったことだ。
これまでコンサルタントは、市場動向や技術トレンドといった情報整理に多くの時間を割いていた。この大部分は早晩AIに置き換えられるだろう。しかし顧客がコンサルタントに期待することの本質は、ノウハウや人脈を駆使して企業戦略をサポートし、新たな価値を創出することだ。AIが作業を代替することで、むしろコンサルタント本来の価値だけが残ったとも言える。AIを駆使できるコンサルタントは、今よりもっと重宝されるはずだ。