究極のAIがもたらす「新しく、奇妙な社会」、私たちはどう生きればいいのか?今後「仕事」が消えてなくなるかもしれない世の中で、自分の存在理由とは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「AGI後」の世界では何が起きるか?
驚くべき5分野へのインパクト

 前編では AGIが何であるか、そしていつ頃生まれうるかを考察した。後編では、AGIが生まれたとしたら、その後の世界に何が起きるかを考えたい。

 Claudeを提供する Anthropic社の CEOである Amodei氏は、社会をより良い方向に導く上で AGI3) が重要な役割を果たすと考えており、 2024年10月のブログ記事の中で、特に注目する分野として表の 5つを示した。

 この表に出てくる「AI生物学者」は、自動的に発見を行う AIで、前編で紹介した Nobel Turing Challengeの考え方と等しい。自動化によりイノベーションのペースが早まるので、 21世紀末までに達成できるのではないかと考えられていた業績が、AGIの出現後 5〜10年以内にほぼ達成されると予測できる。これを Amodei氏は「圧縮された21世紀」と呼んでいるのだ。

 Amodei氏は、技術そのものがもたらす恩恵については極めて楽観的であるものの、経済モデルなどの社会システムに関わる面では懸念を表明していることに注意されたい。インパクトは、上から順に起きていくわけではないが、下の項目ほど一般化されており、影響が及ぶのに長い時間がかかると言えるだろう。とはいえ、今後 5年以内の AGIの達成といったように、最も早いペースで事態が進行するならば、これから 10年以内に目に見える変化が現れることになる。

3) Amodei 氏自身は、「AGI」よりむしろ「強力な AI (powerful AI)」という呼び方を好んでいる。