輝きと危うさを見極める「目」を養う

では、ABEJAとRidge-iのような明暗を、私たちは事前に少しでも見抜くことはできなかったのでしょうか。もちろん完璧な予測は不可能ですが、闇雲に投資するのではなく、いくつかのポイントを押さえることで、勝率を高めることは可能です。

IPOセカンダリー投資は、単なる「運試し」ではありません。その企業の真の価値や将来性、そして市場の熱狂度合いを冷静に分析する「実力勝負」の舞台なのです。

表面的な「AI関連」といったテーマだけで判断するのではなく、その中身を吟味する「目」を養うことが、この戦場で勝ち抜くための鍵となります。

未来を切り拓く「事業の独自性」に注目せよ

まず重要なのは、その企業が手掛ける事業の独自性と将来性です。同じAIという括りでも、どのような課題を解決し、他社にはないどんな強みを持っているのかを深く掘り下げてみましょう。

例えば、特定の業界に特化した強力なプラットフォームを既に持っているのか、あるいは技術的な優位性がどこにあるのか、といった点です。

企業のウェブサイトや公開されている目論見書を読み解き、「この会社は、5年後、10年後も社会に必要とされ、成長し続けることができるか?」と自問自答するプロセスが不可欠です。

多くの投資家が熱狂している時こそ、一歩引いて企業の「本質的な価値」を見つめる冷静さが求められます。

株価の需給を読む「ロックアップ」というヒント

次に注目したいのが、株式の需給関係です。特に、既存株主に対して一定期間、市場での売却を制限する「ロックアップ」の条件は必ず確認しましょう。

ロックアップがしっかりと設定されていれば、上場直後に大量の売りが出て株価が急落するリスクをある程度抑えることができます。逆に、ロックアップが緩い銘柄は、上場後の売り圧力に警戒が必要です。

公開される株数が市場規模に対して少ない場合も、希少性から株価が上がりやすい傾向があります。これらの需給に関する情報は、企業のファンダメンタルズとは別の、短期的な株価の動きを予測する上で非常に重要なヒントとなります。

IPOセカンダリー投資は、短期間で比較的大きな利益を狙える手法でもありますが、その裏には大きなリスクが潜んでいます。

しかし、事業内容を深く理解し、需給関係を読み解く努力を続けることで、そのリスクをコントロールし、大きなチャンスを掴むことができるでしょう。

※本稿は、『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。