「ようやりました」北川景子のセリフに聞き覚えあり!2年前の大河で演じた「戦国のラスボス」との共通点〈ばけばけ第34回〉『ばけばけ』第34回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第34回(2025年11月13日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

「じつはわたし、社長になりました」

 タエ(北川景子)が菰(こも)を抱えてとぼとぼ帰ってくると、梶谷(岩崎う大)が待ち伏せていた。

 没落したタエを記事にしたいと言うのだ。

 三之丞(板垣李光人)がそれを目撃、慌てて止めに入る。

 だが、こっそり口止め料を渡すのを、タエは見てしまう。銅貨でなくお札である。こんな大金、どうしたのか?と問われ、とっさに「じつはわたし、社長になりました」と三之丞はごまかした。

「ようやりました」とタエ。

 この「ようやりました」のセリフに聞き覚えがある人、手をあげて。はーい。大河ドラマ『どうする家康』(2023年)の最終回で、北川景子が演じた茶々が燃え盛る大坂城の天守閣で「茶々はようやりました」と自分で自分を褒める場面があるのだ。筆者はノベライズを書いていたので、余計によく覚えている。

 そのときのディレクターは『ばけばけ』と同じく村橋直樹。当時取材したときこのセリフの思い入れを語ってくれていた。

「僕が、古沢さん(脚本の古沢良太)にひとつ、お願いしたことがあります。秀吉の死のときと同じで、ずっとラスボス的であったので、最後、茶々(北川景子)に人間に戻ってほしいなあと思って。当時も、きっと、秀頼の母として、周りからの見られ方もラスボス的だっただろうし、実際、自分の背負ってきた業みたいなものに突き動かされて走ってきたのでしょうけれど、最後は、一瞬でもいいからひとりの人間に戻してあげたいとお願いして、書いてもらったセリフが『茶々はよくやりました』です」(Yahoo!ニュースエキスパート、2023年12月17日配信の筆者記事より)

『どうする家康』の茶々も戦国時代、サムライとサムライが己の誇りを賭けて闘う熱い時代が終わっていくことを無念に思っていた。北川景子にはそういう役が似合うようだ。