
会議では「何が話されたか」ばかりに目を向けがちだが、職場で見かける“感じのいい人”=空気の読める人は、「どう話されたか」にも注目している。信頼を得る人と得られない人の差は、ここに現れる。連載第18回は、「空気を読む力」を鍛える具体的な方法について、会議後20分の習慣から組織全体での育成手法まで、すぐに役立つヒントを紹介する。(人材研究所ディレクター 安藤 健、構成/ライター 奥田由意)
その場の空気に影響されて
振る舞いが決まる
前回は「感じのいい人」の正体に迫り、その鍵が「空気を読む力」にあることを解説しました。これは迎合ではなく、場の感情や流れを感じ取り、言葉や行動をうまく調整できる力です。そうした人に共通する5つの行動のヒントもご紹介しました。
続く今回は、ビジネスパーソンが今日からできる「空気を読む力」を伸ばすための具体的な方法をお伝えします。
詳しい解説に入る前に、「場の理論」※という考え方を紹介します。これは心理学の領域で研究されてきた、人と人が関わると、そこに場ができてエネルギーが生まれるという理論です。例えば、同僚と一対一で向き合えば二人の場が生まれますし、複数人が集まればその人数分の場が生まれます。
この理論において重要なのは、人の行動や振る舞いは、その人の性格だけで決まるのではなく、その場の空気や相手との関係性、感情の動き、状況に影響されて決まるということです。自分以外の誰かがその場にいれば、必ずその人(たち)との関係性が影響して自分の振る舞いが変わってくるということなのです。
私の経験を例に挙げると、編集者やライターといったメディアの人と話している場合と、人事畑の人と話している場合では、明らかに話し方が違います。説明の丁寧さも異なれば、共有できる話題も変わり、言動が全て変わるわけです。
これは、その場の空気に影響されて振る舞いが決まるという場の理論の典型的な例と言えるでしょう。
だからこそ、その場で適切な振る舞いをするためには、空気を読む、つまりその場を読むという力が必要になってくるのです。