日本の民主主義を守るために

F:最後に一つ。「民主主義を守る」とはどういうことでしょう。

平:人の心は自由です。 だからこそ攻撃の対象にもなる。SNSで怒りの初動が付いてしまうと、自由な判断に見えるものを外から簡単にバイアスを付けられてしまう。それでも我々が守りたいのは、自由に疑い、自由に信じる権利です。

 その権利を守るために、国家は“平時の防衛”を制度化しなければならない。法で土台を固め、組織で人を束ね、運用で回す。AIは攻撃の道具にもなるが、盾にもなる。デジタル庁で進めている「源内(げんない)プロジェクト」のようなガバメントAIで行政の隙間を埋め、同じ地図(共通状況認識)を広く共有する。それが私の信条です。

F:ありがとうございます。それでは最後に読者へメッセージをお願いします。

平:「同じ地図を持ちましょう」。サイバーは連携のスポーツです。官も民も同盟国も、見る地点、使う言葉、鳴らすアラートを揃える。守れない国にAIは来ない。守れる国にこそ投資は集まり、実装は加速する。私は、そこまで持っていきたいと思っています。

一同:ありがとうございました!

平将明デジタル大臣平将明衆議院議員(デジタル大臣) Photo:Diamond

「バズりは演出できる」「怒りの初動は機械が付ける」……何とも恐ろしい話ではありませんか。恐ろしいですが、これが現実であり、私たちはその現実世界に生きている、生活している。当たり前にスマホを使い、LINEで連絡を取り合い、PayPayで支払いをしている。

 ヨタでも書きましたが、週末は宮崎の険しい山に沢登りに出かけていました。6時から登り始め、麓(ふもと)に降りたのが5時過ぎです。その間は電波が一切入らない。期せずして11時間のデジタルデトックスです。電波が通じた瞬間に、私を含めた7名全員がスマホを取り出してチクチク始めたのは実に印象的な光景でした。業務メールを何本か済ませると、次に見るのはSNSです。中には、今日の写真を早速上げている人もいる。それほどまでに、現代の私たちにとってSNSは身近な存在です。

 錯覚が本物の熱狂に化ける前に、制度と運用で止める構えが要る。これからの戦争は、ミサイルではなく言葉で始まるかもしれません。我々の乗せられた“怒り”が、最初の一発になるかもしれません。

 国家を守るとは、もはや「兵器」や「国境線」だけではありません。民主主義という日常は気にしない、目に見えない制度を、技術と制度でどう守るか?

 平大臣の答えはシンプルです。「同じ地図を持とう」。 それが“演出されたバズ”に抗う、もっとも現実的な方法ではありますまいか。

 それではみなさまごきげんよう。来週から通常運行、クルマの話に戻ります。

(フェルディナント・ヤマグチ)