さらにそれに関連して、自分の年齢を事実として素直に認められるようになったこともあります。大学に行き直したい・今から初めて行きたいという人の中には「青春を取り返そう」という意識の人もいますが、ぼくの感覚としては、「学び続ける」ことだけを考えて通っていたことが功を奏して、落ち着いた楽しい学生生活を送れたのだと感じています。社会人学生はあたたかく受けいれられますが、同じ世代だと思われることは当然なく、学生時代にありがちな恋愛や金銭トラブルに巻き込まれることなどもありません。実際は大学に行ったことで逆に、自分がいい年齢の大人で、若い人とはちがう形での世の中での役割や立ち回りがあることを感じ、それをやるべきだと思うようになりました。年齢に負けじと、ではなく、その年齢にふさわしい大学での学び方があるのです。
また、学生の立場ながら、教員の先生方と名刺交換をして仲良くなることが多く、「学生だけどやはり大人は大人」と痛感することになりました。これもたまに聞かれますが、女子学生にドキドキして困るなんてことは絶対にありません。
「学び」の種類が増えると
仕事面にもメリットあり
第4かつ最大のメリットとして、受験や通学を通じてさまざまな「学び」への興味が広がったことがあります。早稲田の受験勉強では、専門の社会科はさておき、久しく放置していた英語と国語を中学レベルからやり直すことにしました。勉強を進めていくと、自分が生徒時代にどこでつまずいていたのかが、手に取るようにわかります。
もちろん老眼が始まり、暗記力や机に座る体力は落ちているので、覚えられない≒成績がなかなか上がらないことにイライラはします。それでも語学や古典の楽しさに気づきました。定期的にTOEICを受けるようになったり、百人一首や漢詩の本を読んだり、今度は漢字検定〔漢検〕を受けてみようかな、と考えたりする大きなきっかけとなりました。教育学部に入学後は、文理を問わずたくさんの教養科目が選択できたので(必修の多い法学部だとこうはいかないのでこれは教育学部の良さだと思います)、哲学・政治学・法学・地理学・天文学・地学などを選び、大いに刺激を受けました。
とくに、当時は非常勤講師だった文学部の岩川ありさ先生の「ジェンダー・スタディーズ」(編集部注/社会における「性」の役割や、それが個人や社会に与える影響を研究する学問分野)は、これだけでも大学に再入学した価値があったな、と思わせるほどの、真摯かつ誠実な講義でした。
仕事面のメリットは、第1に、仕事の種類が増えたことです。