たとえばぼくは、入学してしばらくすると、「早稲田ウィークリー」という学内WEB媒体に特集インタビューを掲載してもらえました。そしてそれを偶然見た編集者の坂口惣一さん(現在は軽井沢の出版社・あさま社の社長)が、『ニュースの“なぜ?”は日本史に学べ』(SB新書)の執筆を依頼してくれたのです。新書は以前から書きたかったのですが、きっかけがありませんでした。大喜びで引き受けて書いたところ、これがそこそこ売れました。それで次の『47都道府県の歴史と地理がわかる事典』(幻冬舎新書)の持ち込み企画が通り、発売時、見城徹社長のご厚意で新聞に全五段広告を打っていただけたこともあってずいぶん売れたため、以後、各社から新書の依頼が来るのは普通になりました。だから今この本を書けているのですね。
他の社会人学生との縁で
仕事に繋がることもある
また、1年秋学期の選択授業で一緒になった政経学部の社会人学生(珍しい!)がたまたまラジオプロデューサーの小笠原悠輝さんで、翌年秋から調布FMで『伊藤賀一のPM11』という30分の冠番組を6年半も担当させてもらうことになりました。早稲田に行っていなければ、絶対になかった話です。
これらは、ぼくがもともと予備校講師という特殊な個人事業主だったからということもあるとは思いますが、企業に勤めるサラリーマンの方でも、さまざまな形で仕事の種類や幅が増えることにつながると思います。
第2のメリットは、あらゆる仕事の現場で大きなプラスのネタになったことです。大学に行っていて、と話すと、「え?大学もう1回行ってるんですか?そりゃいい!自分も行きたいなあ」というふうに言われることが普通です。それは仮に大学院であれ同じだと思います。「なんでまた(苦笑)」「今さら行ってどうするんですか(笑)」「学歴ロンダリングじゃないの?」的な反応は皆無です。仕事ができる人ほど、成長するためにもっと学びたいと思っているのか、好意的な反応が返ってきます。
あとは、仕事上のヒントがそこらじゅうに転がっていることです。先ほどプライベート面でのメリットにも「20歳前後の若者のトレンドに詳しくなった」と書きましたが、ぼくの場合、学生がこんなに紙の本・漫画・新聞・雑誌を読まず、ほとんどTVを見ないのか!と衝撃を受けたことで、紙媒体を重視する姿勢は崩さないまでも、ネットメディアも絶対にあなどらないという意識に、すぐ転換しました。