そして、次に黒田書店に来て、母が実際に辞典を紹介したときには、つい買ってしまう、というわけだ。
「買ってください」とお願いしない。けれど、相手の頭の中にポン、と印象を残すようなコミュニケーションを心がける。これは、まさに、今の僕のPRのやり方につながっていると思う。
相手の記憶に残すのは
キーワードだけでいい
たとえば、「『3秒筋トレ』って知ってますか?最近ハマってるんですけど、この効果が本当にすごいんですよ!1日3秒でいいから続くんですよね」。メディアの人には、これくらいの情報を伝える。
「何ですか、それ?」と相手が興味を引かれたように見えたら、「今、担当している本なんですけど、ニューヨーク・タイムズにも取り上げられたんです。3秒だけど本当に効くんですよ。論文でも発表されているんです」
これ以上は話さなくて十分。本の内容は一言も説明しない。

じつはこのとき本を持っていても、メディアの人には必ずしも渡さない。なぜなら、喉が乾いてない人に水を渡しても、迷惑なのと同じだからだ。
あとで相手が「3秒筋トレ」という言葉を自分の生活の中で目にしたとき、「あ、黒田さんが言っていた本だ!」と記憶がよみがえる。そうするとある日、「『3秒筋トレ』の著者に取材できたりしますか?」という連絡がきたりするのだ。
ここではじめて本を送る。
伝えたいことの欠片が、相手の記憶や心に自然と残るようにする。それがそのあとどんどん大きくなっていく。説得するよりも、相手の妄想力に任せてみる。
これは、僕が“伝説のセールスウーマン”から学んだ方法だ。