活動初期のハマスは、イスラエル領内で自爆攻撃を繰り返していたが、2007年にイスラエルがガザ地区にコンクリートの壁を建設して以降、イランの支援を受けながら多数のロケット弾を保有するに至った。イスラエルが強硬な対応を強めれば強めるほど、ハマスの姿勢も過激化していったのである。
そして2023年、ハマスはイスラエル領内に多数のロケット弾を発射し、さらに地上部隊が国境を越えて侵攻。1200人を超える死者と、約250人の人質がガザ地区に連れ去られるという、イスラエルの歴史上かつてない大規模な攻撃を敢行した。
ハマスの思想的背景について、政治学者の臼杵陽は『世界史の中のパレスチナ問題』のなかで、次のように述べている。
〈パレスチナはワクフ(アッラーに寄進された土地)であり、その土地は一片たりといえども異教徒に売り渡してはならない〉
(臼杵陽『世界史の中のパレスチナ問題』講談社現代新書、2013)
(臼杵陽『世界史の中のパレスチナ問題』講談社現代新書、2013)
この思想をハマスは共有しており、そのため彼らにとってはユダヤ人を駆逐するか、自らが消滅するかの2択しかないのである。こうした極端な選択肢のもとで戦う構図が、紛争をさらに深刻化させている要因の1つとなっている。
ガザ地区をアメリカが所有し
高級リゾート地を建設?
このように、相互に妥協の余地のない2つの勢力が激しくぶつかれば、戦闘が苛烈を極めるのは避けられない。そのため、現在もガザ地区では破壊が繰り返されており、戦闘員のみならず、子どもや高齢者を含む多くのパレスチナ人の命が失われ続けているのである。
こうした悲惨な状況に対して、バイデン政権は実質的に無為無策であった。
しかし、トランプが再び大統領に就任したことで、停戦の可能性が高まるのではないかという期待が広がった。現時点では、トランプが望んでいたような即時の停戦や和平の実現には至っていないが、バイデン政権とは異なり、トランプ政権には停戦に向けた明確な動きが見られるのは確かである。