トランプ大統領トランプ米大統領 Photo:Chip Somodevilla/gettyimages

ドナルド・トランプ氏は、2025年2月に行われたイスラエルのネタニヤフ首相との共同記者会見で、ガザの住民を第三国へと移動させ、ガザ地区をアメリカの長期的な占領のもとで「中東のリビエラ(地中海のリゾート地)」に再生するという大胆な構想を打ち出した。あまりにもめちゃくちゃな提案だったが、裏にはどんな思惑が隠れているのか——?イスラエル・ガザ紛争の状況とともに見ていこう。※本稿は、佐藤 優『トランプの世界戦略』(宝島社新書)の一部を抜粋・編集したものです。

2000年に渡ってユダヤ人が
強いられた迫害、離散、虐殺

 2023年10月7日にイスラム武装組織ハマスによるイスラエル攻撃によって始まったガザ地区での紛争は、すでに1年半以上が経過しているにもかかわらず、停戦の糸口はまったく見えていない。2024年にトランプが大統領選に勝利したことで、トランプ政権下において急速に和平が進むという見方も広がったが、政権発足から5カ月が経った現在も、いまだ戦闘は継続している。

 ガザ地区の将来を語る前に、まず今回の紛争の背後にあるイスラエルとハマスそれぞれの内在的論理を確認しておく必要がある。

 まずイスラエルの側から見てみよう。

 イスラエルは、言うまでもなくユダヤ人の国家である。ユダヤ人は2000年に及ぶ長い迫害と離散(ディアスポラ)の歴史、そして、度重なる虐殺の記憶を持っている。そのなかでもとりわけ重大な意味を持つのが、ナチス・ドイツによるホロコーストだ。