自分が違和感を覚えるのは、大切にしたい何かを持っているという証拠です。その価値が組織にとって今後も変わらず必要だと思うのであれば、今の人数規模や今の事業の状況という文脈に置き換えたとき、それをどのように生かすかという視点で考えてみればいいのです。
第三に、こうした思いを上司や仲間に打ち明けて、対話をしてみることです。
「最近会社が変わってきたと思いませんか」「昔はこうだったけど、今のやり方にも良さってあるのかな」といった問いをみんなで話し合える場や関係性があり、変化をみんなで解釈できれば理想的です。
昔から会社にあった価値を今の環境でどう実現できるかを考え、「こういうことをやってみませんか」という提案や行動をしてみてもよいのです。
違和感を持つ自分を否定的に捉えるのではなく、組織への愛着の表れとして肯定的に受け止める。そして、その愛着を新しい環境でどう生かすかという建設的な方向に転換していくことが重要なのです。
組織として古参の違和感をどう受け止めるか
モンスター化を防ぐマネジメント
組織としては、こうした違和感を持つ、主にミドル以上の社員、つまり創業期あるいはそれ以前から会社にいる古参社員の扱いを慎重にする必要があります。かれらは扱いを間違えると、モンスター社員になってしまう恐れもあります。
変化への違和感が正当化され、新しい取り組みへの抵抗勢力として組織内で影響力を行使し始めると、組織全体の変革が大きく阻害されます。
そうならないように、人事の現場では、このような古参社員の声を貴重なものとして扱います。例えば、100人までの人数だった会社が500人規模になって人事制度を新たに作る際、まず、古参社員に対して「あなたが感じている組織らしさ、あなたが持っている組織アイデンティティとは何ですか」とヒアリングを実施します。
そこで「うちの会社らしさといえば、社員同士の信頼と連帯の強さです」という声が多く聞かれたとしたら、それを残した形で人事制度を作ることを考えます。新制度を説明する際にも、「皆さんが創業期から受け継いできた信頼と連帯の強さを、こういう形で生かして、今回はこのようにやろうと思っています」と伝えることで、合意を形成しやすくなります。