「うちの会社」と呼んだ
経験はないだろうか?
平たく言えば、人は長く身を置くうちに、その組織らしさと自分らしさを重ねるようになる。これが組織アイデンティティの獲得、つまり自分が組織とアイデンティファイ(同一視)された状態です。
この状態を確認する方法があります。次のような質問に「はい」と答える数が多いほど、その人は組織にアイデンティファイされていると言えます。
「誰かがこの会社のことを批判していると、私は侮辱されたような気持ちになる」
「メディアがこの会社のことを批判していると、わたし自身が非難されているように感じる」
「誰かがこの会社のことを褒めていると、自分が褒められたかのようにうれしい」
「この会社のことを他人がどのように思っているのか、私はとても関心がある」
「この会社のことを私が話すとき、たいてい会社名ではなく、『うちの会社』と言う」
「この会社の成功は私の成功だ」
こうした問いの主語は全て「私」になっています。つまり、自分と組織をどれくらい重ね合わせているかということなのです。
組織に強烈にアイデンティファイされている人は、すでに辞めた会社のことを「うちの会社」と言ったりします。会長が退任した後も会社経営に口を出し続けるというのも同じ原理です。それほど自分と組織を一体のものとして捉えているのです。
このように組織と自己を同一視している状態で、その組織に急激な変化が訪れると、「この会社は自分が知っている会社ではない」という、アイデンティティの断絶が生まれます。前の会社らしさが消えることは、一部の人にとっては、自分らしさを否定されることと同じです。これが組織アイデンティティの危機です。
人が組織アイデンティティを認識する時というのは、組織が急成長した時、急激に縮小した時、売却・買収などでステータスが変化した時、創業家がいなくなったり、工場が閉鎖されたりした時など、アイデンティティを維持する要素が失われた時です。