「今この瞬間」の完璧なワークライフバランスを求める人が幸せになれない理由写真はイメージです Photo:PIXTA

「キャリアアップ」「自律」「ビジョンを持て」――耳にするたびにプレッシャーを感じる人は多い。日々の業務に追われ、将来像まで考える余裕などない。仕事と生活のバランスに悩む人に向けて、“キャリア”の本来の意味に立ち返り、肩の力を抜いて両立を考えるためのヒントを提案する連載第22回。(人材研究所ディレクター 安藤 健、構成/ライター 奥田由意)

「ワークライフバランスがうまくいかない」
キャリア至上主義を見直してみませんか

「何かというと『キャリア自律しろ』と言われてしんどい」「『キャリア』という言葉を聞くだけで辟易する」「毎日ルーティンワークに明け暮れているが、それだけではいけないのか」「ワークライフバランスがうまくいかない」といった悩みはありませんか。

 近年、「キャリア至上主義」とでも言うべき考え方が広まってきているように感じます。かく言う私も、人事担当として仕事をしている提携先の企業などで、キャリア面談を行うと、「キャリアについて真剣に考えろと言われても、何がしたいかわからないし、出世欲もない」「キャリアアップという言葉を聞くだけで、『意識高い系』の人からの押し付けのように感じてしまう」という声をよく聞きます。

 こうした声はルーティンワークが多い職場に限った話では? と思われるかもしれませんが、総合職として高いスキルが求められる仕事に従事し、入社から数年の経験、それこそ着実にキャリアを積んできた人たちからも、声が上がっています。

 日々の業務をこなすだけで本当に忙しく、将来のキャリアビジョンなど頭の片隅にも置けないというのです。もしかすると、仕事の内容に関わらず、現代の多くの若手・中堅社員が抱える共通の悩みなのかもしれません。

 そもそも、私たちはキャリアについて意識を高く持たなければならないのでしょうか。あるいは逆に、そこそこの仕事をして「ゆるく」働き、むしろプライベートを充実させたほうがいいという、いわばライフ中心の考え方もありますが、キャリアかライフか両極端に捉えるのでなく、もうちょっとバランスを取る方法はないのでしょうか。

 今回はどんな立場であれ、「キャリア疲れ」している人たちに「キャリア」という言葉を聞いて、そんなに身を固くする必要はないと感じてもらい、仕事も生活もできるだけ思い通りにする方法をお伝えしたいと思います。