「AIがソフトウエアを一掃」は大いなる誇張ILLUSTRATION: ELENA SCOTTI/WSJ, ISTOCK

 最近の人工知能(AI)は多くのことができ、将来はさらに多くのことができるようになるだろう。だが、1兆2000億ドル(約178兆円)規模の業界をつぶすのはおそらく無理だ。

 市場調査会社 ガートナー の予測によると、これは世界の企業が2025年に業務ソフトウエアに費やすとみられる金額だ。非常に大きな数字であり、昨年の1兆1000億ドルを11%近く上回る。

 企業はテクノロジー関連分野の中でも特にソフトウエアに多く支出している。だがAIの時代になり、この予算への脅威は高まっているようだ。チャットGPTなどのツールが当初うたっていたのは、素人でも自然言語で大規模言語モデルに要件を伝えるだけでソフトウエアを作成できる、ということだった。この「バイブコーディング」があれば、理論上は既製のソフトウエアは必要なくなる。チャットGPTを開発した米オープンAIは今月、 最新モデル「GPT-5」 のライブデモで、英語話者向けのフランス語学習アプリを数分で作成した。

 オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)はこのイベントで、「オンデマンド型ソフトウエアという考えは、GPT-5時代を特徴付けるものの一つになると考えている」と語っていた。だが出遅れ感は否めない。米画像処理半導体(GPU)大手 エヌビディア のジェンスン・フアンCEOは2017年に「AIはソフトウエアを飲み込むだろう」と宣言していた。

 存続の危機が迫っているかもしれないことは、すでに暗雲が立ち込めていた業界に一段と暗い影を落とす。ガートナーのアナリストは7月のリポートで、貿易戦争や実際の戦争、インフレ見通しが世界経済に不透明感をもたらし、企業はIT関連の「新規支出を一時停止」していると指摘した。 AIインフラへの投資ブーム も、企業の他のテクノロジー関連予算を圧迫している。