「お金は大切だけど、お金ばかり考えて一生を過ごしたくない」
物価上昇、株価変動など、お金の不安が尽きない時代。どうすれば、自由に豊かに生きられるのか? 娘のために「お金と投資」のアドバイスを綴った人気ブログを書籍化したのが『改訂版 父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』(ジェイエル・コリンズ著)だ。投資歴50年を通じて「経済的自立=人生の選択肢を持つこと」と説く著者が、時代に左右されない投資戦略と人生哲学を紹介している。
作家の橘玲氏は「お金持ちになるには、シンプルな方法がひとつあるだけ。あなたはなぜ、それをしないのか?」と評し、『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルは「美しくシンプルな本だが、人生に深い影響を与える」とコメントを寄せている。約10年ぶりに改訂となるベストセラーの本書から、その内容の一部を特別公開する。

借入金は、負ってはいけない重荷
大学を出て数年後に、私は初めてクレジットカードをつくりました。
無職の私が飼っているプードルでさえ貸出枠を持っている現代とは違って、当時は簡単にはつくれませんでした。
最初の月にカードで300ドル使いました。請求書を見てみると、購入明細と合計のほかに最低支払額10ドルと書いてありました。
信じられません。300ドルの買い物をしたのに、月に10ドルだけ払えばよく、まだ買い物ができるというのです。すごいぞ!
でも、頭のどこかに父の言葉がよぎりました。
「信じられないくらいよい話は、よくない話だ」
“あるいは”でも“ひょっとすると”でもなく、はっきりと「よくない」というのです。
幸い、近くにいた姉が、小さな字を指し示してくれました。残りの290ドルに対しては18%の利息を課すとあります。なんだって? カード会社の人たちは私がそんなバカだと思っているのか?
世の中は借り入れで回っている
実際、彼ら(カード会社)はそう期待していたのです。私個人に対してではなく、みんなそうすると考えているのです。
そして、残念ですが、多くの場合、彼らの期待はかなえられます。あなたのまわりを見回してみてください。よく見てみると、なんの疑いもなく借り入れをする人のなんと多いことか。それが財産を築く上で最大の障害になるというのに。
営業担当者にとって、これは便利な道具です。借り入れをしない場合に比べて、商品やサービスを売るのがずっと簡単になり、より多くを売ることができます。
借り入れをしなければ、新車の値段が5万ドルになることもないし、学生ローンをしなければ大学の学費が20万ドルになることもなかったはずだと考えたことはありますか。
ところが、借り入れは、毎日の生活の中で当たり前のこととして宣伝され、利用されているのです。借り入れが特殊な存在だとは到底言えません。
2024年末にアメリカ人は総額18兆ドル(初版を出版した2015年は12兆ドル)の借入金を背負っています。住宅ローンが12.6兆ドル、学生ローンが1.6兆ドル、そしてクレジットカードや自動車のローンなどが3.7兆ドルです。
本書をお読みになっている時点では、間違いなく数字はもっと大きくなっているでしょう。
「借り入れのリスク」を
お金持ちの人は肝に銘じている
問題なのは、ほとんど誰も、これが問題だと思っていないことです。多くの人は借り入れを行うことで、よりよい生活を手に入れられると考えています。
はっきり言いましょう。この本は経済的自立、つまり、あなたが経済的な自由を勝ち取ることを目指しています。豊かになって、自分の人生を自分でコントロールするのです。
もう一度まわりの人を見てみましょう。ほとんどの人は、経済的に最後まで自立できないまま終わるでしょう。その最大の理由は借入金を受け入れていることです。
あなたには、彼らと違う考え方をしてほしい。その手始めが、借入金は当たり前ではないと理解することです。借入金は、富を築く可能性を奪い去る、たちの悪いものです。そんなものを頼りにしてはいけません。
大多数と言えるほど多くの人が借入金まみれなのに幸せそうにしていることが、私には信じられません。
(本稿は、『改訂版 父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』を一部抜粋・編集したものです)
ファイナンシャル・ブロガー(ブログ「jlcollinsnh.com」主宰)
1975年から投資を行っている個人投資家。何度も転職する中で、収入の範囲内で生活するようになり、気がつけば夫婦どちらも働かなくても暮らせるようになっていた。実践したのはシンプルな投資だけ。収入の半分を投資、借金をしない、バンガード創業者ジャック・ボーグルの教えに従ってインデックスファンドに投資する。これだけで経済的自由を手に入れた。
2011年、娘宛てに「お金と投資」についての手紙をしたためる。その内容をブログに発表すると、世界中から注目されるようになる。