「考えが浅い人」ほど使いたがる“無責任なアドバイス”とは?
「1つに絞るから、いちばん伝わる」
戦略コンサル、シリコンバレーの経営者、MBAホルダーetc、結果を出す人たちは何をやっているのか?
答えは、「伝える内容を1つに絞り込み、1メッセージで伝え、人を動かす」こと。
本連載は、プレゼン、会議、資料作成、面接、フィードバックなど、あらゆるビジネスシーンで一生役立つ「究極にシンプルな伝え方」の技術を解説するものだ。
世界最高峰のビジネススクール、INSEADでMBAを取得し、戦略コンサルのA.T.カーニーで活躍。現在は事業会社のCSO(最高戦略責任者)やCEO特別補佐を歴任しながら、大学教授という立場でも幅広く活躍する杉野幹人氏が語る。新刊『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』の著者でもある。

「この人、考えが浅いな」がバレる瞬間とは?
右脳で考える、など、ビジネスパーソンは「右脳」という言葉をよく使う。
そのような議論では、ざっくり言えば、クリエイティビティの源を「右脳」と捉えている。なので、1メッセージでこうアドバイスしたりする。
「もっと右脳で考えた方がよい」
似たような伝え方も、たくさんある。
「左脳もいいけど、右脳をもっと使えるといいよね」
「右脳派なわたしからすると、あなたは左脳派に見える」
などなど。
仕事で結果を出す人の多くは、「右脳」という言葉を使わない
しかし、仕事で結果を出す人の多くは、「右脳」という言葉を使わない。なぜならば、「右脳」という言葉を使った瞬間に、その言説が本当かどうか反証可能性がないからだ。
反証可能性とは、科学哲学などでも使われる用語だが、ざっくり言えば、後々に結果での確認によって反証できる余地を意味する。
「もっと右脳で考えた方がよい」というアドバイスは、後々に結果での確認によって反証できる余地があるだろうか。
あなたがこのアドバイスを受けて仮に結果が出たとして、それはあなたが右脳を使ったから結果が出たのか?
あなたがこのアドバイスを受けて仮に結果が出なかったとして、それはあなたが右脳を使ったけど結果が出なかったのか?
そもそもだが、あなたはどうやって右脳を動かすのか。
これらがわからないだろう。「もっと右脳で考えた方がよい」と言われても、相手は実行もその結果の確認もできないので、相手にとってはなんの意味もないアドバイスなのだ。
右脳や左脳の議論は、そもそも、まだ科学的に証明されていないことばかりだ。疑似科学かどうかの議論もある。だが、それらの科学的な議論の以前に、相手へのアドバイスに使っても意味がない言葉なのだ。
このため、仕事で結果を出す人は、まわりの人になんの役にも立たない、「右脳」という言葉をアドバイスなどのメッセージでは使わないものだ。
それでもなぜ「右脳」という言葉を使うのか
では、なぜ「もっと右脳で考えた方がよい」など、相手にとって反証可能性がない、意味のないアドバイスを、人は言うのか。
反証可能性のないメッセージは、否定されることがないので言いっ放しにできて、それっぽく聞こえることがあるからだ。
反証可能性がないので、否定されようがない。否定されないので、意味はないが、言いっ放しにできる。言いっ放しになるので、それっぽい人が言うと、意味がない言葉でも、それっぽく聞こえてしまうことがある。
なので、セルフブランディングなど、それっぽい人がそれっぽく聞こえることを言いたい場合には、反証可能性のない意見は使えることがある。
しかし、いくら自分のセルフブランディングにはなっても、相手には意味がないので、そのメッセージは相手の助けにはならないし、無責任なアドバイスになる。
「右脳」という言葉を使ったアドバイスなどのメッセージは、どこまでいってもその人が自分のために言っていることであって、相手のことを考えたものではなく、相手の助けにはならない。
考えて欲しい。
メッセージを相手のために伝えたいのか、自分のために伝えたいのか。
これが、分岐点だ。どちらを選ぶかは、自分次第だ。
(本原稿は『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』を一部抜粋・加筆したものです)