パチンコは「頭が悪いことへの罰金」なのか? ギャンブルをする人の心理とは何か。
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。数々の成功者に接し、自らの体験も体系化し、「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。
コロナ後の生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。
『ゆるストイック』では、新しい時代に突入しつつある今、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、「私自身が深掘りし、自分なりにスッキリ整理できたプロセスを、読者のみなさんに共有したいと思っています」と語っている。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「くだらない」にも理由がある
世の中の多くの出来事は、特定の誰かが意図的にコントロールしなくても、自動的に最適化されていく力を持っています。
経済学者アダム・スミスが「神の見えざる手」と表現した市場経済の自動調整機能は、その一例です。
しかし、この法則は経済だけに留まらず、世の中のあらゆる現象にも広く当てはまります。
そのため、あああ目の前に理解できない出来事があったとしても、それを「くだらない」「バカバカしい」「世も末だ」と一蹴するのは、思考を停止している態度に他なりませんあ。
実際には、すべての出来事にはそれぞれの背景や理由があり、それを選択する人々がその時点で最適だと考える行動を取っていると考えたほうがいいです。
パチンコにハマる人々
私自身かつて、ギャンブルにハマる人々の行動がまったく理解できませんでした。
確率や期待値を考えれば、パチンコやスロットは「負けるゲーム」の典型です。
胴元の利益が保証されている以上、やればやるほど損をする仕組みになっています。
そのため、ギャンブルに没頭する人々の行動が非合理に見え、「なぜそんなことをするのか」と不思議に感じていました。
しかし、直接話を聞き、彼らが置かれている状況や認識を深掘りしていくと、意外なことが見えてきました。
彼らにとって、その行動は決して非合理ではなく、むしろ最適化された選択だったのです。
ギャンブルをやる心理
たとえば、多くの人がギャンブルに求めているのは「当たり」や「勝ち」の報酬だけではありませんでした。
ストレス発散の手段としてギャンブルを楽しんでいる人も多かったのです。
日常でストレスを抱え、ネガティブな思考にとらわれがちなとき、ギャンブルをしている間だけはその思考から解放され、目の前のことに没頭できると話してくれました。
これは、サウナやスポーツといった趣味と同じメカニズムです。
何かに没頭している間は、リラックス効果を得ることができます。
つまり、ギャンブルをすることで脳をリラックスさせ、ストレスを解消するという意味では、決して非合理的な行動ではないのです。
彼らにとっては、単なる「儲けるための活動」ではなく、心の安定を保つための「ストレス解消」でもあったのです。
世界は「最適化マシン」
この経験を通じて学んだのは、自分の視点だけで他者の行動を評価してはいけないということです。
自分には理解できない行動も、その人が置かれた状況や見ている情報の中では十分に合理的である場合がほとんどです。
重要なのは、その行動が「世の中全体」にとっての最適化か、「その人自身」にとっての最適化かの違いを認識することです。
目の前の限られた情報の中で断片的な合理性を作るワナを「限定合理性」と言いますが、人類全員がこの限定合理を持っているにすぎません。
なぜなら、世の中のすべての情報を完全に把握することが個人にはできないからです。
それが可能なのは、神のような存在だけでしょう。
そして、今後の分断された世界において重要なのは、他人がどんな限定合理性を持っているかを想像しながらコミュニケーションを取っていく態度です。
世界は「最適化マシン」として機能しています。
それぞれの人々が、それぞれの状況や条件の中で最適だと考える行動を取っています。
その現実を受け入れることで、私たちの視野は広がり、他者への理解も深まるでしょう。
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)を上梓した。
また、新しくYouTubeチャンネル「佐藤航陽の宇宙会議」https://youtube.com/@ka2aki86 をスタートさせた。