エリートにかぎって知らない「頭の悪さの諸悪の根源」とは何か。
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。数々の成功者に接し、自らの体験も体系化し、「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。
コロナ後の生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。
『ゆるストイック』では、新しい時代に突入しつつある今、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、「私自身が深掘りし、自分なりにスッキリ整理できたプロセスを、読者のみなさんに共有したいと思っています」と語っている。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

分断がもたらすワナとその回避策
現代の社会において、ビジネス、政治、科学、テクノロジーに近い人ほど、言語や論理を過剰に評価する傾向があります。
この傾向が原因で、目の前で起きている社会現象を軽視し、結果的にそれが自分たちにとってのリスクとなっていることに気づけていません。
現代のトレンドに熱狂する人々を「くだらない」と鼻で笑い、見下す態度を取ることで、彼ら自身が気づかぬうちに自分たちの社会的な足場を失っているのが現実です。
「分断」は加速する
現代は、あらゆる分断が加速している状況にあります。
その分断がもたらす最大の問題は、自分とは異なる立場にいる人々への想像力がどんどん失われていることです。
異なる意見や立場を「バカだ」とレッテルを貼る人々は、その背後にある構造を深く探る努力を放棄しています。
しかし、彼らがなぜそのような考え方に至ったのかを注意深く観察すれば、そこには必ず彼らなりの理屈があります。
それぞれの立場における正しさが存在していることに気づくはずです。
分断の原因は、異なる意見を持つ相手の「視点」を理解しようとしないところにあるのです。
エリートへの怒り
現代社会は知識社会と言えます。
その知識社会に適応した少数の富裕層・エリート・インテリが自分たちに有利な仕組みを作り上げ、その中で優位性を維持してきました。
法律、経済、テクノロジー、教育など、社会のあらゆる仕組みが彼らにとっての「正しさ」を基準に設計されています。
しかし、その結果、知識社会に順応できない人々が置き去りにされ、彼らの不満や怒りが爆発する状況が生まれているのが現代です。
こうした不満や怒りは、知識社会を無邪気に推し進めてきた人々に向けられ、互いが互いの首を絞めるような構造が生まれています。
「自分と他人は同じ」という思い込み
この分断の背後には、人間の「多様性」の存在があります。
人類はあらゆる環境の変化に適応できるように、多様性が担保されているという説があります。
それぞれ得意不得意があり、知識社会で活躍する才能を持つ人もいれば、戦国時代に活躍する才能を持っている人もいます。
いろいろなタイプがいる種のほうが環境の変化に強いのです。
しかし現実には、多くの人が「自分と他人は同じであるはずだ」という思い込みを抱えており、この思い込みが悲劇を生む要因となっています。
これが頭の悪さの諸悪の根源です。
他人の能力や価値観の違いを理解しようとせず、自分の視点だけで物事を判断することで、社会全体の分断が深まっているのです。
分断を乗り越えよう
異なる立場の人々を「愚かだ」と決めつけるのではなく、なぜ彼らがそのように考えるのか、その背景や理屈を探る努力をすることが重要です。
そこには必ず彼らなりの正しさがあり、理解すべき文脈が存在しているのです。
自分の正しさや価値観を絶対視せず、多様な視点を受け入れる柔軟性を持つことが、これからの時代を生き抜くカギとなります。
現代の分断は、知識社会における私たち人間の認識やコミュニケーション手段の違いがもたらしたものであり、それ自体は避けられない現象とも言えます。
しかし、原因を理解すれば、私たちはその分断を乗り越えることもできます。
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)を上梓した。
また、新しくYouTubeチャンネル「佐藤航陽の宇宙会議」https://youtube.com/@ka2aki86 をスタートさせた。