
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。
余裕の賜なのか、はたまた失速の前触れなのか――。
中外製薬は7月24日、早期臨床開発段階にある自社創製品5品目の自社開発中止を発表した。開発コードで記すと「LUNA18」「SAIL66」「SOF10」「STA551」「AMY109」の5品目。AMY109は第II相試験まで、残りは第I相試験まで進んでいた。同日の決算説明会で、アナリストから「これだけ一気にドロップしたことはなかったのでは」との声が上がったが、奥田修社長は「知る限り、中外史上初」と、異例の経営判断だということを滲ませた。
もっとも中外ウォッチャーに衝撃を与えたのは、開発中止を決めた数だけでない。その中身にもある。
代表例がLUNA18。中外が鳴り物入りで喧伝していた中分子医薬品の実用化プロジェクトで真っ先に臨床入りしていた化合物だ。21年10月に臨床試験を開始し、初陣を飾ったものの、4年で幕切れを迎えた。STA551も注目株で、中外創製の「スイッチ抗体」という技術を初めて用いた抗体薬だ。照明のスイッチのように「オン/オフ」と、ある条件下でのみ標的抗原に結合できる特徴からその名を冠した。固形がんを対象に開発を進めていた。AMY109も中外が生み出した「リサイクリング抗体」という技術を適用した子宮内膜症薬候補で、ホルモン療法とは異なるアプローチが可能になると期待が寄せられていた。