武田薬品CEOの役員報酬は米ビッグディールをまとめた日本製鉄CEOの5倍超!?タケダ株主の3割が役員賞与反対の納得の理由武田薬品工業社長CEOのクリストフ・ウェバー氏(左)と日本製鉄会長CEOの橋本英二氏 Photo:Diamond,JIJI
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

「トランプ2.0」の幕開けで案の定、予見可能性が著しく低下した国際社会において、これまで大人物を気取っていた経済界の著名な連中がたちまち媚びたり、慌てたり、ブチ切れたりする様を目の当たりにするのは、ある意味で小気味よいものだった。この第47代米国大統領が「おかしい」ことは言を俟たないとして、同じレベルで争う者たちも短期間のうちに化けの皮が剝がれたためだ。

 日米間においても、「私は格下の格下」などと交渉前から白旗を振ってしまうような担当大臣が両手指の数に近づくほど太平洋を往復しながら朝貢外交を展開し、首の皮1枚のところで関税交渉の決裂を防いだのは周知の通り。自動車産業を守る替わりにコメ市場を差し出した。

 そうした動きのなか、米国内の政争に図らずも巻き込まれたことで一気に高まった悲観論を見事に跳ね除け、金星に近い白星をひとつ確保したのが日本製鉄だ。同社を19年から実質的にけん引する橋本英二会長による綿密かつ正攻法による交渉が実を挙げた。

 日鉄は、米の鉄鋼名門・USスチールにおよそ2兆円を投じて100%子会社にする代わりに、日鉄の至宝と言われる無方向性電磁鋼板や、付加価値の高いシームレスパイプの製造法などをUSスチールに供与することで日米両国に「技術の砦」を構築。両社がインド、ブラジル、チェコに持つ生産拠点を速やかに拡充して攻めの経営に転じ、中国の巨大鉄鋼メーカーによる市場蚕食を食い止めながら、最終的には業界世界一の座を奪還するとの青写真を描く。

「鉄は国家なり」という言葉を耳にした人は多いだろう。鉄鋼の生産量が国力に比例するものだとする旧ドイツ帝国の初代宰相オットー・フォン・ビスマルクの発言に由来するが、鉄鋼業界においてはもうひとつのニュアンスが加えられる。それは国家を運営するような長期的視点に立って揺るぎのない事業運営を行うべし、という自らへの戒めの意味が込められている。日鉄は中国勢の物量・価格両面での攻勢を受けて世界首位の座を失って久しいものの、経営上の矜持まで失ったわけではなかったことが今回の橋本采配で示された。

 前説がいささか長くなったが、翻って日本で唯一のメガファーマと自称する武田薬品のクリストフ・ウェバー社長である。