写真:中外製薬株式会社Photo by Masataka Tsuchimoto

時価総額など複数の指標で製薬業界1位の中外製薬は、今年創業100周年を迎えた。スイスのメガファーマ(巨大製薬会社)ロシュの傘下に入る直前の約20年前と比べて売上高約7倍、時価総額約35倍に成長。数年後には今以上の“わが世の春”を迎えそうな情勢だ。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

20年余りで売上高約7倍
開発パイプライン数2.5倍

 1925年、上野十藏氏(当時32歳)が創業した中外製薬(創業当時は中外新薬商会)。「海外の良質な医薬品を日本中に広めるとともに、やがては日本で創製した医薬品を海外に届けたい」という思いが、社名の「中外」に込められているという。

 その中外製薬は今年、創業100周年を迎えた。この100年で最大の変化の年は「2002年」で異論はないだろう。

 この年、中外製薬はスイスのメガファーマ(巨大製薬会社)であるロシュと戦略的アライアンスを開始。ロシュが中外製薬の株式の過半数を取得し、中外製薬はロシュの子会社になった。中外製薬単独では莫大な研究開発費を負担できない故の策だったが、当時は外資による日本企業買収にネガティブな見方もあった。

 その後ロシュの完全子会社になるとのうわさが業界内で浮上したこともあったが、結果として今日まで、中外製薬は「ロシュグループの恩恵を受けながら日本で上場を維持し、独立した経営をする」という稀有(けう)なポジションを維持してきた。

 02年の大決断は吉と出た。中外製薬がロシュの傘下入りする直前の02年3月期(当時は3月期決算)と24年12月期の決算を比べると、売上高は1651億円から1兆1706億円に拡大。製薬会社にとって成長の源である開発パイプライン数は、この間に約2.5倍の60まで増えた。

 中外製薬自身の成長も見事だが、業界他社と比べても目を見張るものがある。まずは時価総額で、ダントツの約10.4兆円(8月25日終値時点、2位は武田薬品工業の約7.1兆円、3位は第一三共の約7.0兆円)。従業員平均年間給与では3年連続トップ(24年12月期は1207万円、大手製薬で比較)をひた走る。また国内医薬品売上高1位(24年4月~25年3月、IQVIA調査の販促会社レベル)であり、デジタルトランスフォーメーションに特に注力する上場企業から選定される「DXプラチナ企業(2023~2025)」でもある。

 現状、多くの点で「国内製薬トップ」の中外製薬。実は数年後、三つの理由からさらなる高みを迎えそうなのだ。