これまでの企業史を振り返っても、学閥や事業部閥が人事を大きく左右してきた。いまだに特定の大学出身者でないと出世しない会社もあるし、「技術畑」と「営業畑」が覇権を競う会社もある。

 M&Aで大きくなった会社では、ある時期までのメガバンクのように、もともとどの会社の出身であったかが重要な場合もあるし、役員ポストをめぐる争いが、出身母体の比率を意識して行われる会社もある。

こうした内集団問題は、一部の人にとってはキャリアの追い風となるが、他の人にとっては大きな壁となる。

内集団びいきのデメリットとメリット

 あらためて、この内集団びいきのデメリットを整理しておこう。

 まず、公平性の欠如である。努力や実績よりも「仲間かどうか」で評価が決まるようになれば、組織のモラルは崩壊する。頑張っても報われない社員が増えれば、やがて優秀な人材が流出する。そしてそもそも内集団に該当しない優秀な人は入ってこなくなる。

 次に、多様性が失われる。似たようなバックグラウンドの人ばかりが集まれば、発想は均質化し、変化に対応できなくなる。たとえば業界で新しい発想が求められるとき、同じ大学の同じ研究室の出身者だけで議論しても斬新なアイデアは出にくい。

 さらに、ガバナンスの脆弱化も深刻だ。内集団びいきが強い組織では、仲間同士がかばい合い、問題を隠蔽する傾向が強まる。企業の不祥事の背景にも「内部の結束が外への報告を妨げた」という構造が見え隠れする。

 一方で、内集団びいきは全面的に否定できないところもある。

 第一に、信頼形成を容易にする。同じ大学や出身地だと、それだけで人は安心する。初めて会った相手でも「この人は信頼できる」と思える。

 第二に、結束力を生む。外部からの圧力に直面したとき、内集団は団結しやすい。危機に瀕した際の強みになる。

 第三に、文化や価値観の継承が容易になる。学閥や同郷会は単なるコネではなく、長く続くネットワークとして組織のアイデンティティを守る役割を果たす。とくに現在のように社員が多様化すると、コアとなる文化の担い手になり得る。

 よって、これらの良い点はいかしつつ、一方でデメリットが顕在化しないように上手にコントロールしていくことが重要だ。