今年はマネジメントの父、ピーター・F・ドラッカー没後20年を迎えます。そのマネジメント論は現代でも深く息づいています。
「マネジメントの基礎を身につけたい」
「リーダーとして、どうメンバーに接したらいいのかわからない」
「管理職として仕事をしてきたけど、うまくいっていない気がする」
「ドラッカーは難しそうだから、今まで触れてこなかった」
そのような悩みを解決するヒントが詰まった書籍『かの光源氏がドラッカーをお読みになり、マネジメントをなさったら』が発売されます。本書は、これまでドラッカーを知らなかった人でも物語の中でその本質を学べる1冊です。
本記事では、著者の吉田麻子氏がドラッカーから学べることをストーリー形式で解説します。

「学歴フィルター」は有効か
「高学歴を採用しておけば安心だ」
本当にそうでしょうか。
採用の現場では「学歴フィルター」という言葉が飛び交いますが、それは万能の基準ではありません。
ドラッカーの人事観から、「人を採用するとはどういうことか」をあらためて考えてみましょう。
ドラッカーカフェ:若手人事担当者の集い
ようこそ『ドラッカーカフェ』へ。
ここは仕事の悩みをコーヒーの香りとドラッカーの言葉でやさしく解決するささやかな場所。今日の参加者は30代の人事担当者、3名です。
――皆さん、こんにちは。今日は人事担当の方にお集まりいただきました。
今日はどんなテーマでお話ししましょうか?
Aさん「最近、学生から『学歴フィルターってあるんですか?』と聞かれることが多いんです」
Bさん「うちでも『学歴がすべてではない』と言いながら、つい学歴に目が行ってしまって……」
Cさん「でも正直、高学歴だからって必ず活躍するわけでもないですよね」
しばし沈黙。
やはり皆さん、答えに迷っているようです。
「ドラッカーならどう考えるんでしょうか?」
ドラッカーの視点:人事は仕事から始まる
――皆さん、ありがとうございます。そもそもドラッカーは人事についてどのように考えているのかを見ていきましょうか。
ドラッカーは『非営利組織の経営』でこう述べています。
「人事は第一に、なされるべき仕事からスタートする」
まずはそもそもなぜ人材を採用するのか、というところから考えましょう。
皆さんが所属している組織は社会において果たすべき役割・ミッションがあり、人材採用をするということは組織が未来に向けて存続し続けていくうえで適切な人材を必要としているということです。
つまり「どんな人を採るか」よりも前に、「組織のミッションは何か」「顧客にとっての価値は何か」を明らかにし、そのために必要な仕事を設計することが先決なのです。
頭の良い人に来てほしい、天才的な人に来てほしい、仕事のできる人に来てほしい――そう思う前に、まず「なされるべき仕事の設計」があるのです。