事業・仕事・人の順に考える

ドラッカーのマネジメントの体系から考えると、まず事業のマネジメントがあります。

その組織のミッション、社会において果たす役割は何か。顧客は誰か。顧客にとっての価値は何か。成果は何か。われわれの計画は何か。

次に仕事のマネジメントがあります。ミッションを果たし、成果を出すためにどのように仕事を設計するか。

そのうえで人のマネジメントがあります。どのように人材育成や動機づけ、コミュニケーションをしていくか。

つまり、まずは仕事を設計し、そのあとに人の問題となるわけです。

では基本的なこととして押さえておきたいのですが、実際に事業のマネジメントを考えるとき、どんな問いを立てればよいのでしょうか。

参考になるのが『経営者に贈る5つの質問』です。

1.われわれのミッションは何か?
2.われわれの顧客は誰か?
3.顧客にとっての価値は何か?
4.われわれにとっての成果は何か?
5.われわれの計画は何か?

これらの問いを発することで、事業のマネジメントが明らかになっていき、具体的になされるべき仕事が明確になっていくはずです。

そのうえでの採用活動ということになりますね。

ですから、求める人物像はここではじめて明確化できるわけです。

さらにいうと、「このような会社である」ということに魅力を感じる方、自分の価値観と共通であると感じる方が応募してくることになるといえます。

Aさん「なるほど、優秀な人材を惹きつけるためにミッションを伝え、会社の魅力を理解してもらうことが必要ですよね」

Bさん「そして仕事。役割が曖昧だと、どんなに高学歴でも力を発揮できないですよね」

Cさん「でも学歴は採用の参考にはなるんじゃないですか?」

――確かに、学歴はわかりやすい指標のひとつです。では、ドラッカーは学歴についてどのように語っていたのでしょうか。

学歴は“万能の鍵”ではない

ドラッカーは学歴について詳細に述べている章などがあるわけではありませんが、何か所か言及しているところがあります。

たとえば、『マネジメント(上)』第15章「新しい現実」の中で、こう述べています。

「知識労働者といえども必ずしも高学歴は必要ない」

ここでは「肉体労働者」に対する「知識労働者」の出現について書いているのですが、ここでは高度の知的能力や高等教育は必要ないとしています。

知識社会では、学歴というラベルよりも「知識を活かして成果を出す力」が重要だからです。

一方で同じ著作の『マネジメント(上)』第22章「雇用と所得」では、労働力の移動性についてのくだりでこうも書かれています。

「特に高学歴の知識労働者は、自らの知識とスキルによって最大の貢献を行える所へ動けなければならない。埋もれさせることは、社会とともに本人にとっても退化を意味する」

Cさん「必要不可欠ではないけれど、せっかくの知識やスキルを埋もれさせるのはもったいない、ということですね」

Bさん「学歴は“万能の鍵”じゃないけど、正しく生かせば力になるし社会の役に立つんだ」