
3年前、電気自動車(EV)で古き良き米国のドライブ旅行に出掛ければ悪夢になりかねなかった。
2年前でもせいぜい、 一つ間違えば危ない状況 だった。
最新の業界データとこの夏2度出掛けた長距離ドライブの経験から、今は自信を持って言える。EVを使った遠征は可能なだけではない。楽々できるようになった。
ちなみに、これは テスラ 車に限らない。EVが新しもの好きのおもちゃから、大衆向け電化製品へと進化したのは、車両自体よりも米国の急速充電インフラが速やかに整備されてきたことが大きい。米国ではEV税額控除が9月30日に期限を迎えるのを前に、消費者の間でお買い得感が強まり、一部報道によると売れ行きが伸びている。この勢いがいつまで続くかは不明だが。
多くの米国人は気づいていないが、トランプ政権がEV優遇策を撤回しているにもかかわらず、充電インフラの整備は着々と進んでおり、そのペースは加速している。EVでドライブ旅行に出ても、筆者が経験したようにちょっとしたトラブルは当然あるが、航続距離への不安とは無縁だった。
EV充電データ分析企業パレンによると 、米国には現在約1万2000カ所の急速充電ステーションがあり、充電ポートは合計約6万基に上っている。米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の公共充電部門責任者ウィリアム・ホチキス氏によると、米国の急速充電ポートは2030年までに3倍の18万基に増える見通しだ。GMを含む自動車メーカー8社による充電ネットワーク事業「Ionna(イオンナ)」は、この間に3万基を新たに設置する計画だ。
これは大きな意味を持つ。EVはもはや自宅で充電し、主に都市部で運転する人に最適な車ではない。ついに万人向けの選択肢となり得るのだ。
ガソリン車より優れている?
8月のある暑い朝、ロサンゼルス国際空港近くでEVに乗り、総走行距離約2500キロのドライブ旅行に出発した。米国のEV中心地とも言うべきこの場所には、充電できるチャンスが豊富にある。だが他のEVドライバーも同じくフル充電を目指していた。筆者は幸い、EV充電の新しい大型施設の一つを見つけた。
レンタカー駐車場の向かいで英石油大手BP傘下の「 BPパルス 」が運営する充電ステーションには、48基のEV充電ポートがある。全てのポートが驚くほど高速の充電を行える。多くは定格出力400キロワットで、実際の使用条件で通常200キロワットを超える。米国の「超高速」充電ポートの中でも最速の部類だ。