参政党が意欲を示す「スパイ防止法」の落とし穴、権利は少なく義務ばかりの「憲法草案」の大問題【池上彰・増田ユリヤ】2025年8月5日、参議院予算委員会で初めて質問に立った参政党の神谷宗幣代表 Photo:JIJI

「スパイ防止法」
必要性を訴える声

増田 秋の臨時国会に向けて、スパイ防止法の議論が活発化しそうです。7月末の参議院議員選挙で議席を伸ばした参政党の神谷宗幣代表が、選挙後の会見で「スパイ防止法案の提出を目指す」と表明したためです。

池上 他にも自民党、日本維新の会、国民民主党などから必要性を訴える声が上がっていますね。

日本でスパイが
活動していたのは確か

増田 なぜ今、スパイ防止法なのでしょうか。

池上 情報自体がより大きな価値を持つようになったことがあるでしょう。戦後の日本でも外国政府の指示を受けたスパイに相当する立場の人間が、日本国内で情報収集活動を行ってきたことは確かです。例えば冷戦期には、ソ連のスパイが日本国内で暗躍していましたが、これは主に米国の情報を得るためのものでした。

 米国にはFBI(連邦捜査局)のような防諜機関があり、さらに国家の安全保障に関わる機密情報を外国に売り渡した場合には、最高刑で死刑になるという法律もあります。そのため取り締まりの厳しい米国国内よりも、スパイ防止法のない日本で情報を得る方が容易だったのです。

増田 しかし何をもって「国家の安全保障に関わる機密情報」と見なすのか、言論や報道の自由との関係性はどうなるのかなど、まだまだ議論すべきことがあるのではないでしょうか。

池上 新聞やテレビの特ダネ記者の仕事の一つは国や地方の公務員に働き掛けて未公開情報を明かしてもらうことですから、当然、政府や首長は制限したいと考えるでしょう。重要なのはスパイ行為の定義をどのように定め、運用するのかという点でしょう。