
SNS通じて伝播、参院選争点にも浮上
ナショナリズムをくすぐる危うさ
外国人の交通事故や不動産投資が頻繁にニュースで取り上げられることもあってか、「外国人問題」が参議院選挙で課題として脚光を浴びている。
「外国人は優遇されている」と主張し、「日本人ファースト」を掲げる参政党が東京都議会選挙で新たに3議席を獲得し、参院選に向けた世論調査でも急速に支持を高めているのが、このことを象徴する。
石破首相は内閣官房に外国人問題事務局を設置する意向を表明し、15日には事務局組織「外国人との突如ある共生社会推進室」を発足させた。外国人政策が物価高対策と並ぶ争点の一つとしても浮上する。
「日本人ファースト」というフレーズは、日本人のナショナリズムをくすぐる。
戦後日本は、国際協調主義を旨として内外差別をなくすことを重要な国策としてきた。日本が順調に経済成長をしている時は良かったが、1990年代初めのバブル崩壊以降、失われた30年の時代を過ごし、日本人は鬱々(うつうつ)とした感情を持つようになった。
一方で急速に台頭してきた中国や韓国に対する反中、反韓感情に加え、最近では「アメリカ・ファースト」で自国第一主義を突き進むトランプ大統領に倣い、諸外国に遠慮する必要もないという感情が社会にも少しずつ広がってきていることも背景にあるのだろう。
とりわけ伝播(でんぱ)力が圧倒的なSNSのもとで、フェイクニュースや誇張された情報が流れやすくなっていることが、瞬く間に人々の脳裏に「外国人問題」が認識されることになっている。
だが、「日本人ファースト」のキャッチフレーズが、外国人問題の実態とはかけ離れて排外的な趨勢(すうせい)に火をつけるようなことは避けなければならない。もともと日本人には、日本人だけで徒党を組もうとする内向き志向があるが、偏狭な排外主義は日本の国益にはならない。