相手の思考の解像度が低いと
提案しても聞いてもらえない
このような人に提案やアドバイスをしても、「自分事」として捉えられず、思考の解像度を上げることができません。このままでは、せっかく提案をしても聞き入れてもらえません。相手に「やりたいこと」がなければ、こちらが何を言っても響かないのです。
先の例のほかにも、テストの前日に一夜漬けで対策をする学生(私も中高生時代はこちらの部類でした)や、指示待ちの社員、広告代理店やコンサルタントに仕事を丸投げするクライアント、経験の枠内で答えを出そうとする上司などは、思考のスイッチがOFFになっていると言えます。
このような状態から相手を抜け出させるには、まず相手の思考のスイッチをONにする話し方から始めます。
相手の思考の解像度を上げるためには、相手の頭脳が「考えたい状態になっている」=「やりたいこと」がある状態になっているのが大前提です。
「やりたいこと」がない、もしくはボンヤリしている相手に対して、提案やアドバイスを何度繰り返しても、「自分事」として聞き入れてもらうことができません。「なぜそれをやる必要があるのか」が分かって初めて、相手は話を聞こうという態勢になってくれます。
そのために、相手との会話の中から「やりたいこと」を引き出し、思考を始めるキッカケをつくることが必要なのです。
「伝わる」話し方をするためには、会話の主役である相手に、「やりたいこと」を自ら発見してもらわなければならないのです。
実は、私も学生時代には友人と遊び呆け、「やりたいこと」を考えたことはありませんでした。
しかし、大学進学を考える時期になり、友人から「大学で何する?」と聞かれて初めて、やりたいことがない自分に不安を感じました。
「やりたいことを見つけないとダメな人生になる!」
どこからともなく、自分を戒める声が聞こえてきました。焦った私は、答えを求めて書店に駆け込みました。アテもなく本棚を眺めながらウロウロしていると、真っ赤な表紙の1冊が目に留まりました。
アインシュタインが書いた、『物理学はいかに創られたか』という本でした。