社長の感動ポイントをつかんだ私は、「社食以上の美味しいご飯を考えてみてはどうでしょう?」と提案すると共感してもらえました。

 さらにイメージをハッキリさせるため、「例えば『できたてご飯のおにぎり屋』とか…」と提案したら、社長は笑顔でこう言いました。

「ぜひ、やってみたいです!」

 その後、社長との話し合いを重ね、「土鍋の炊き立てご飯のおにぎり屋」を新規事業として出店することになりました。

 相手がやりたいことになかなか気づけない時には、相手が感動したエピソードを引き出し、それをヒントに「やりたいこと」を「提案」する話し方をすることで、相手の「やりたいこと」の言語化を支援しましょう。

人は問題が見えてくると
解決しようと考える

心を動かすスイッチ2:問題に感じていることを引き出す

 人は「このままではダメだ」と問題を認識すると、解決しようとする気持ちが自然と生まれます。

 この解決したい気持ち=心を動かすスイッチを入れることで「やりたいこと」を見つけ出します。

 ある会社の役員から、社員の離職について相談された時のことです。

「中堅社員の離職率が上がって困っています」

 その理由を聞くと、予算達成と部下の育成の両立で疲弊していると話しました。

 私は、部下の育成に手間取っている社員が多い現状を推測し、

「部下の育成スキルが、社員ごとにバラバラではないでしょうか?」

 と聞きました。

 すると役員は「その通りです!」と言いました。

 そこで私は、

「社員が、同じ方法で部下を育成できるのが理想ではありませんか?」

 と目指すべき理想の姿を推測すると、役員も同意見でした。

「であれば、部下の育成方法の体系化が課題ではないでしょうか?」

 と私が提案すると、役員は少し考えてから次のように言いました。

「薄々気づいていましたが、やはりそれでしたか!」

 その役員は社長に提言し、部下の育成方法の体系化に取り組みました。