「やりたいこと」を見つけて
人生のターニングポイントに

 当時の私は、物理と数学が最も苦手でしたが、なぜかこの本に興味を惹かれて読んでみると、初めの数ページで物理学の面白さに引き込まれました。心の底から感動しながら、「物理なんか役に立たない」と毛嫌いしていた自分を後悔しました。

 そして、文系進学予定だった私は思い切って理系進学へ切り替えました。

 担任の先生からは「お前の成績では絶対ムリ」と言われ、友人からも「お前の頭じゃ不可能」と言われました。悔しかったですが、そう言われて当然の学力でした。

 しかし、人生で初めて心からやりたいと思えることを見つけた私の心は、周囲から何を言われてもブレることは一切ありませんでした。

 この状態になってからは普段の授業にも身が入り、教師が話していることを能動的に聞くようになりました。「やりたいこと」に向かって頭を動かすことで、何でも貪欲に聞いていこうという態勢に入ったのです。

 浪人はしましたが、目指していた物理学科に進学することができました。

 これは受験勉強に限ったことではありません。人は、「聞きたいこと」や「知りたいこと」「話したいこと」があって初めて、自発的に考え、相手の話を聞けるようになるのです。

 心を動かすスイッチが入ると、自ら「やりたいこと」を考え始め、思考の解像度を上げる一歩を踏み出します。

 そして、「どうすれば実現できるだろう?」「次に何をすればいいだろう?」といった問いが自然と湧き上がり、人に相談や協力を仰ぐようになります。

図表:心を動かすスイッチを見つける同書より転載 拡大画像表示