相手の心を動かすスイッチを入れる
「最もシンプルな方法」とは?
大学で物理学科に進学した私は、その後大学院へ進みました。できたばかりの研究室で、先生も若くエネルギーに満ちあふれていました。
大学院1年の夏に、先生から「アメリカの大学との共同研究の話があるが、君はやってみたいか?」と聞かれました。私は「やりたいです!」と即答しました。
先生は、私が研究室に入る時に「君は何をしたい?」と、やりたいことを聞いてくれました。私が世界の研究者と一緒に仕事がしたくて、「数年後に海外へ行きたいです」と言っていたことを、先生は覚えていてくださいました。
「かなりハードな研究になると思うけれど、やり切る自信はあるか?」と、先生は私のやる気を確認しました。
私の意思は固く、「はい!向こうの研究者といい仕事をしてきます!」と言って海外へ飛び立ちました。
海外での共同研究は想像以上にハードでしたが、自分の人生にとってかけがえのない経験となり、先生には心から感謝しています。あの時、自分のやりたいことを聞いてくれなければ、海外へ行くことも、世界の研究者と一緒に仕事をすることもなかったと思います。
「やりたいことは何か?」と素直に相手のやりたいことを聞き、意思を確認する話し方は、相手の心を動かすスイッチを入れる最もシンプルな方法です。
ここからは、相手に「やりたいこと」を聞いても、なかなか出てこない人のための話し方について見ていきましょう。
相手の「やりたいこと」を
見つけ出す3つの方法
心を動かすスイッチ1:感動エピソードを引き出す
人には「感動する」という素晴らしい感性が備わっています。感動する=心を動かすスイッチであることから、相手の感動エピソードを引き出し、「やりたいこと」を見つけ出します。
社食事業会社の社長から、新規事業について相談された時のことです。
「新しい事業をしたいのですが、何をしていいか思いつきません」
私はアイデアを提案する前に、社長が感動するポイントを見つけようと、「社長が今までに最も感動した体験は何でしょうか?」と聞くと、「社食でアツアツのご飯を、美味しそうに食べるお客様に感動しました」と答えました。社長もご飯(お米)が大好きで、ご飯で喜んでくれると幸せな気持ちになるそうです。