
ドナルド・トランプ米大統領はどこからでも自己正当化の裏付けを見つけ出す。従って9日発表された雇用の伸びの大幅な下方修正について、同氏が米連邦準備制度理事会(FRB)とジョー・バイデン前大統領を非難したのは、何ら驚くことではない。しかし、この下方修正を現在の脆弱(ぜいじゃく)な労働市場に対する警告と受け止める方が賢明だろう。
労働省労働統計局(BLS)は、2024年4月から2025年3月までの間に創出された雇用が、従来の推計値より91万1000人少なかったと報告した。つまり雇用創出は、月次統計で示されていた数の約半分の月平均7万5000人ほどだったということだ。
ほぼすべての業種で就業者数が下方修正された。特に顕著なのは、レジャー・ホスピタリティー業(17万6000人)、専門・ビジネスサービス業(15万8000人)、小売業(12万6200人)だ。今回の下方修正は、BLSの年次改定作業によるもので、これは約63万1000カ所の事業所を対象とした月次調査の結果と州の失業保険税に関する記録とを照らし合わせて行われる。
トランプ氏が月次調査の信頼性に不満を抱くのも無理はないが、同氏が主張しているような「不正操作」の証拠はない。本紙がこれまで指摘してきたように、調査回答率の低下により、BLSの統計では近年、就業者数の伸びが過大評価される傾向にあった。調査対象事業所の回答率は43%にとどまり、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の60%から低下している。