若手人材が転職市場で
最も評価される経験年数とは?

 ここまで、年次ごとの各フェーズに分けて解説をしてきたが、改めてキャリアを俯瞰して見るとファネル構造になっていることがわかる。理科の実験で使っていた漏斗(ろうと)をイメージしていただくとわかりやすい。間口が広くて、先が細くなっているということだ。

 間口が広いというのは新卒の時で、同じ大学や学部、高校を卒業したとしてもさまざまな業界や職種に就くことができる。そこから年齢を重ねるにつれて選べる選択肢の幅は狭くなり、スキルや経験はより深いものを求められるようになる。

“ポテンシャル”と“スキル/経験”で分けるとするならば、新卒の時はポテンシャル100%、そこから1年経つごとにポテンシャル要素は10%ずつ減っていき、スキル/経験要素が10%ずつ増えていくイメージだ。

 さて、ここまでの解説を踏まえていよいよ、「若手人材が転職市場で最も評価される経験年数」とその理由について考えてみよう。

 結論からいうと、「どういった目的・手段の転職活動なのかによって大きく異なる」という回答になってしまう。ただ、それはあまりにも乱暴な結論なのでいくつか例を挙げていきたいと思う。

◆CASE1◆
事務職→営業職に転身する場合

 この場合は、短期離職に該当してしまう1年目での転職は避けたいが、それ以降であればなるべく早いほうが良い。3年目以下であったとしてもだ。

 業務のギャップが大きい分、なるべくポテンシャルを評価してもらえる年次で移っていくのがベストだと言える。また、転職のタイミングが早ければ「正直、就活の軸が間違っていた」「深く考えられていなかった」というキーワードが通用する場合もある。

 1社目で5年経過した後に、「就活の軸が間違っていました」という主張が通用しないのは想像に難くないだろう。

◆CASE2◆
営業→事業会社マーケターに転身する場合

 この場合は、そもそも転職を戦略的に1〜2回重ねる必要がある。

 テクニカルスキル色の強いマーケターの場合は、基本的に未経験採用は行っていない企業が多い。事業会社マーケターへ転身する場合は大きく2つのパターンがあり、(1)50名以下のベンチャー企業に営業として入り、社内でのキャリアチェンジで叶えるパターン、(2)マーケティングプロセスの一部を担う支援会社に入り経験を積んだ上で事業会社のマーケティングポジションに転職するパターンである。

(2)のパターンをもう少し掘り下げると、広告代理店やリサーチ会社などが上げられる。そのため最低2回は転職をする事を考えると、2回目の転職も20代では完結しておきたい、かつ2社目では経験を積む必要もあるため、1回目の転職を3年目前後、2回目の転職を6年目前後で叶えられるとベストである。

 転職活動は誰でも簡単にできるが、時に結果は残酷だ。前述のように、目指す将来像や転職する目的によって適齢期は変わってくる。

 だからこそ、若手のうちから自身のキャリアや将来に目を向ける機会を増やし、自身の価値観に合ったキャリアを掴みとってほしいと思う。