話しかける方は、自分の話すテーマについていつも考えています。また、その結論に至った経緯も、自分自身の経験・知識としてしっかり保有しています。
一方、話しかけられた人は、そうした前提情報がありません。
多くの場合、「え、何の話だっけ?」となってしまいます。この状態では、話の内容が頭に入ってきません。
もちろん、時間が限られた状況ですから、全てを伝えることはできません。
そこで、相手の立場で、どんな情報があれば、本題をスムーズに受け止められるかを考えます。
先ほどの例であれば、
「条件交渉で手間取って、何度もご相談させていただいていた○○社の案件ですが、継続契約が取れました」
「来月ご一緒させていただく広島出張ですが、主目的の■■社の他にも訪問を検討したいというお話でしたので、追加で2社のアポイントメントが確定しました」
「先方の担当者のご異動に伴い、今後の契約継続に向けて作戦を練っている××社の次回提案について、現状維持案と追加提案のどちらにするか悩んでいます」
といった情報を付け加えます。
このような導入部分があると、それを聞いている間に、相手の脳内がその話題に向かって調整されます。相手の脳内をセットアップする効果があるわけです。
余計な情報は思い切って捨てる
何がこの話の“幹”なのか
とはいえ、話す時間が限られているので、「なんでもかんでも伝えたい」という欲求には抗わなければいけません。
例えば、先ほどの「出張の例」の場合
「来月の10日から1泊2日で広島に出張する件ですが、■■社の工場見学とその後の会食はあらかじめセットされていましたが、せっかく行くのだから、他の予定もできるだけ入れたい、というご要望をいただいていたと思います。
そちらについて、広島支社と連携しまして、今後の取引拡大のポテンシャルがある企業をスクリーニングして候補企業を4社リストアップしました。その中で、現状は取引が小さいものの、企業規模などを勘案すると重要度が高いと考えられる技術系商社のX社と、取引規模は大きいものの、ここ数年のお取引が停滞気味のY社にアポ入れを行いまして、X社は初日の午前中、Y社は2日目の午後に設定することができました。2日目の午前中にも、もう1社設定できないか調整中です」
こういう伝え方をしてしまうと、エレベーターで偶然会って話す内容としては、情報量が多すぎて、相手が最後まで話を聞くことが難しくなります。