「二度とああいうものは書かないでください」編集者に拒絶されたアンパンマン、その理由とは?【あんぱん121回】『あんぱん』第121回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は第121回(2025年9月15日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

アンパンマンに「怪傑」がついた!

『アンパンマン』から『あんぱんまん』。そして『怪傑アンパンマン』へーー。
 第25週のサブタイトルはその名も「怪傑アンパンマン」(演出:中村周祐)
「怪傑」とはなんだ?

 ようやく『あんぱんまん』が世に出たものの、「二度とああいうものは書かないでください」と嵩(北村匠海)は担当編集者(平井珠生)に言われてしまう。

『やさしいライオン』や『チリンのすず』のようなやさしいものを書いてほしいと思っているのだ。
自分の顔を食べさせるような残酷な描写がある『あんぱんまん』は受け入れがたい。

 大人はそんな反応だが、就学前の児童たちはあんぱんまんの丸い顔を気に入っていることに八木(妻夫木聡)は気づいていた。

 嵩は『詩とメルヘン』の編集長をつとめて1年、次に『いちごえほん』の編集長も務めることになった。「ジュニア詩とメルヘン」という、大人と子どもが楽しめる雑誌だ。

大人もむかし こどもだったし
こどもはすぐに大人になる こころのなかは
おんなじですよ

 まえがきにはこう書いてあった。それをドラマでは嵩がセリフで言っている。

 話は嵩のモデルであるやなせたかしの史実どおりに進んでいる。やなせは2冊の雑誌を抱え、しかも、中のイラストなども自分で描いていた。まえがきとかあとがきとかも書いている(あとがきとかを書くのが好きだったらしい)。

 予算がないとしても、どんだけなんでもやりたがりなのか。ともすれば自己顕示欲が旺盛過ぎるように感じてしまうが、あふれる才能はあって、人間的にも好かれるのか、仕事が引きも切らない嵩。
こうして人気がいまいちな『アンパンマン』にも次々と手が差し伸べられる。

「意外なところにアンパンマンの応援者がいましたね」と蘭子(河合優実)。