思考の暴走と「答えの出ない問題」

人間の脳は、一度何かを考え始めると、同じように考え続けようとする性質があります。そのため、「頭がお暇」モードに陥ると、次から次へと考え続けようとします。

では、「ずっと考え続けられること」とは、一体なんでしょうか。それは、「答えの出ないこと」です。

もし答えが出る問題であれば、答えが出た時点で考えることは終わってしまいます。しかし、「頭がお暇」な脳が求めているのは「考え続けること」であるため、無意識に答えの出ない問題を見つけ出してしまうのです。

そして、答えの出ないこととは、そのほとんどが取り留めのない、ネガティブで嫌なことです。

将来への不安→いくらでも考え続けられます
自己肯定感の低さ→自分の自信のなさを、延々と考えられます
過去への後悔→変えることのできない過去を、いくらでもクヨクヨできます

このように、答えがない問題を考え始めると、終わりがないために思考が止まらなくなり、どんどん嫌な気持ちが湧き上がってきます。この悪循環を断ち切ることが、「頭がお暇理論」の真髄なのです。

「頭がお暇」から抜け出すための具体的な方法

では、どうすればこの状態から抜け出せるのでしょうか。方法はシンプルです。

1. まずは「今」に集中する

最初に試すべきは、「今やっていること」に意識を集中させることです。

家事をしているなら→「この汚れを徹底的にきれいにしてやろう」「どうすれば効率的にできるだろうか」と、家事そのものに集中します
通勤・通学で歩いているなら→「転ばないように」「安全に」と、歩くこと自体に集中します

もし、いつも同じ道で集中できないのであれば、少しルートを変えてみるのも良いでしょう。新しい景色が気持ちを切り替えるきっかけになります。

2. 集中できなければ「行動」と「環境」を変える

「今に集中しよう」と試みても、ついモヤモヤと考えてしまうこともあります。それは、今の作業に脳が飽きてしまっているサインかもしれません。その場合は、思い切ってやることを変えましょう。

例えば、洗い物をしている時にネガティブな考えが浮かんだら、「これから買い物に行こう。何を買って何を作ろうかな?」と次の行動を計画します。そうすれば、先の楽しみについて考えられるため、余計な思考から抜け出せます。

また、環境を変えることも非常に有効です。勉強中に「試験に受かるだろうか」と不安になったら、一度勉強する教科を変えてみたり、思い切って図書館やカフェに場所を移してみたりするのです。環境の変化が、気分をリフレッシュさせてくれます。

充実した毎日を送るために

ネガティブなことを考え始めたら、「あっ、今、頭がお暇になっているな」と気づき、すぐに行動や環境を切り替える。この習慣を繰り返していくことが大切です。

答えの出ないことをいくら考えても、答えは出ません。ただネガティブな気持ちになるだけです。そのような時間を作らなければ、1日24時間という限られた時間の中で、自然と「最近、充実しているな」「余計なことを考えなくなったな」と感じられる瞬間が訪れるはずです。

これが「頭がお暇理論」の神髄でございます。皆様の参考になれば幸いです。

※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。