精神科医が明かす“頑張らなくていいよ”がうつ病の人に響かない納得の理由
誰にでも、悩みや不安は尽きないもの。とくに寝る前、ふと嫌な出来事を思い出して眠れなくなることはありませんか。そんなときに心の支えになるのが、精神科医Tomyが教える 30代を悩まず生きる言葉(ダイヤモンド社)など、累計33万部を突破した人気シリーズの原点、『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)です。ゲイであることのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症――深い苦しみを経てたどり着いた、自分らしさに裏打ちされた説得力ある言葉の数々。心が沈んだとき、そっと寄り添い、優しい言葉で気持ちを軽くしてくれる“言葉の精神安定剤”。読めばスッと気分が晴れ、今日一日を少しラクに過ごせるはずです。

【精神科医が教える】自民党・高市早苗総裁の「ワークライフバランスを捨てる」発言にザワつく人が見落としている“頑張る”の意味Photo: Adobe Stock

高市早苗総裁の発言から考える「ワークライフバランス」

先日、高市早苗さんが自民党の総裁になられた際、「ワークライフバランスを捨てる」という趣旨の発言をされました。

最近は「ワークライフバランスを重視しましょう」という風潮が強いですから、その流れの中で「もう頑張りますよ」と宣言されたことが、逆に新鮮に感じられた方もいたのではないでしょうか。これは、自民党総裁としての覚悟を示すための言葉だったのだと思います。

要は「頑張ります」ということ

しかし、この「ワークライフバランスを捨てる」という言葉だけを捉えて、「それは良くない」と反応された方も多かったようです。ですが、これはあくまで政治家としての決意表明であり、要は「頑張ります」とおっしゃったに過ぎません。

ですので、そこまで問題視するポイントではないのではないか、と私自身は思います。そうでなければ、「頑張ります」と言うこと自体がいけない、ということになってしまいます。

そこで今日は、このワークライフバランスというテーマから派生して、「頑張る」という言葉についてお話ししたいと思います。

うつ病の人への「頑張れ」はなぜ禁句なのか

うつ病の人に『頑張れ』と言ってはいけない」という話は、今や定説のようになっています。これは精神医学の教科書にも書かれているほどです。

医師国家試験には、絶対に選んではいけない選択肢、通称「ドボン問題」というものが存在すると言われています。これを一定数選んでしまうと、他の問題がどれだけできていても不合格になるという、いわばトラップ(罠)です。

そして、この「うつ病の人に『頑張れ』と言う」という選択肢は、その代表的な「ドボン問題」らしいと昔からささやかれています(※ドボン問題の公式な公表はないため、真偽は定かではありません)。

「他人に頑張れ」と「自分が頑張る」の違い

このように、教科書的にも「頑張れ」は禁句とされています。しかし、「人に『頑張れ』と言ってはいけない」ことと、「自分自身が『頑張る』」ということは、全く別の話です。ですから、「私は頑張る」と宣言することは、決して悪いことではないと思います。

周りの人が「頑張りすぎちゃダメだよ」「体を壊すほどやってはダメだよ」と声をかけるのは良いことですが、本人の決意としての「頑張ります」「ワークライフバランスを捨てます」という言葉は、潰れるまでやると言っているわけではないのですから、過剰に反応するのは好ましくないのかなと感じます。