発災直後には、帰宅困難者も避難所へ殺到。3日後から、自宅にいた人も加わり物資の不足でストレスが増加。1週間後から、高齢者の病状が悪化し、避難者同士のトラブルが発生。1カ月後から避難者は減少するが、略奪や窃盗など治安が悪化していく、などだ。

 また首都直下地震が起きると、都内だけで東日本大震災の1.3倍に当たる453万人、首都圏全体では最大800万人の帰宅困難者が発生すると予測されている。

 もし東日本大震災直後のように人びとが一斉に歩いて帰ろうとすると、都内のターミナル駅周辺では「群衆雪崩」が起きる危険性が極めて高い。

 東京都は建物の耐震化を積極的に支援している。たしかに10年前と比べて建物も強くなり地震に対する性能自体は向上した。しかし安心・安全の状態とはほど遠いというのが地球科学者としての私の実感である。

 1人ひとりが自分やコミュニティの「災害シナリオ」をつくり、首都直下地震で発生する災害の具体的なイメージを持って備えていただきたい。

 東日本大震災でも被災地域では長期にわたってライフラインが止まったが、首都直下型地震が起きたら、膨大な人数が避難できる場所もなく、支援もすぐには来ない。指揮系統は混乱し、寝る場所がない。

 さらにケガをしても救急車は来ず病院は機能しない。水もない、電気(冷暖房、冷蔵庫)もない、食べ物もない、そんな状況が起こりうるのだとリアルに想像してほしい。