雇用減速を予見したFRB理事、議長の有力候補にウォラー氏はMAGA派の重要人物ではないため、FRB議長に任命される可能性は低いかもしれない
Photo: Sean Smith for WSJ

 米連邦準備制度理事会(FRB)のクリストファー・ウォラー理事は、雇用市場が持ちこたえているように見えた7月、民間部門の雇用が「失速寸前で赤信号が点滅している」と公然と警告した。あるFRB高官は同氏を軽く皮肉った。

「いいかげんにしないか、クリス。君はもっと優秀なエコノミストだろう」。失業率は4.1%程度で安定しており、労働市場は良好に見えた。

 2週間後、FRBは政策金利の据え置きを決めたが、ウォラー氏は利下げに賛成票を投じた。その2日後に発表された7月の雇用統計は弱い結果となり、率直な物言いで知られるウォラー氏の見方を裏付けた。先週発表された8月の雇用統計は、同氏の仮説の正しさをさらに証明する内容だった。

 この先見性により、第2次トランプ政権の経済人事の中でも特に重要な次期FRB議長の候補として、ウォラー氏の名前が挙がっている。ミネソタ州出身で労働者階級のルーツを持つウォラー氏は、来年5月に任期満了を迎えるジェローム・パウエルFRB議長の後任選びで思いがけない有力候補として浮上している。

 スコット・ベッセント財務長官は先週、FRB議長候補11人の面接を始めると述べた。だがドナルド・トランプ大統領は先週、ケビン・ハセット氏、ケビン・ウォーシュ氏、ウォラー氏の3人を有力候補とみていると記者団に語った。ハセット氏はトランプ氏の経済顧問トップで、ウォーシュ氏は2008年の金融危機時にFRB理事を務めていた。

 ウォラー氏は、トランプ氏とその取り巻き(MAGA=米国を再び偉大に=派の権力中枢にいる政治顧問など)の間で印象が薄いことから、FRB議長に選ばれる可能性は低い。ベッセント氏は7月にウォラー氏を面接しており、ベッセント氏と話した関係者らによると、同氏はウォラー氏に感銘を受けたと語っていた。

 だが、ベッセント氏からの好意的な推薦があっても、それだけでウォラー氏が議長候補に選ばれることはないだろう。トランプ氏は、自身の1期目に財務長官を務めたスティーブン・ムニューシン氏が8年前にパウエル氏を議長に選ぶよう主張したことについて、今なお怒りを覚えている。