タレントのなすびPhoto:SANKEI

全裸で懸賞を当て続けた男を、あなたは覚えているだろうか?人気バラエティー番組「進ぬ!電波少年」の企画「電波少年的懸賞生活」で、一躍スターダムにのしあがったタレントのなすびだ。あれから27年、彼は芸人という枠を超え、誰も想像しなかった人生を歩んでいた。※本稿は、読売新聞社会部「あれから」取材班『「まさか」の人生』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

1年3カ月の極限生活が
なすびの運命を大きく変えた

 目隠しを外すと、6畳一間のアパートだった。ちゃぶ台に、はがきが積まれ、ラックには雑誌が並んでいた。「いったい何をやらされるんだ」

 1998年1月、型破りな企画で人気のテレビ番組「進ぬ!電波少年」で新コーナーが始まった。挑戦者に選ばれたのが無名のお笑い芸人、なすびさん(当時22歳)。

 テーマが明かされる。「人は懸賞だけで生きられるのか」。食料も着る物も当選して入手しろという。裸になるよう命じられ、こう告げられた。「テスト企画だから、放送されるかどうかもわからない」

 雑誌をめくり、懸賞を探す。200枚のはがきにペンを走らせる日々。その姿が毎週放映され、人気者になるなんて思ってもいなかった。もちろん、孤独な極限生活が1年3カ月に及ぶことも、知らない。

くじで選ばれた瞬間は
スターになれると思っていた

 たった1回のくじ引きが人生を一変させた。大雪が降った1998年1月15日、東京都内のビルで、「電波少年」のオーディションが行われていた。集まったお笑い芸人20人ほどの中に、なすびさんもいた。