小学生の頃のあだ名は、漫画「キン肉マン」に登場する顔の長いキャラクター「ラーメンマン」。からかわれ、仲間外れにされた。ある日、大好きなお笑い番組を見ていてひらめいた。

「バカなことをやれば状況が変わるかも」。休み時間、志村けんさんのギャグ「アイーン」を披露した。面白いやつだと思われ、徐々に友達が増えた。

 父親の異動で小学校だけで2回転校した。いじめられ、笑わせて仲良くなるという繰り返し。「人を楽しませれば、周りも自分も幸せになれる」と考えるようになった。

 高校卒業時、両親に「芸能界を目指したい」と打ち明けた。憧れは渥美清さんのような喜劇俳優。大反対され、専修大学に進学した。諦めきれず、隠れてお笑いのオーディションを受け続けた。

「お前、すげえ顔しているな」。ほかの参加者から口々に言われた。幼い頃からコンプレックスだった長さ30センチほどの顔が、武器になると知った。アルバイト先で顔の形が「なすび」に似ていると言われ、名乗り始めた。

 ある日、芸能活動をしていることが親にばれる。母親は大学卒業までの活動を認めてくれたが、条件を出された。「裸でテレビに出ない」。だから、懸賞生活で服を脱ぐよう命じられた瞬間、真っ先に母親の顔が頭をよぎった。

あの時代だから許された
過酷な番組演出の数々

 外部と遮断された生活。自分の姿がお茶の間に流れ、20%超の高視聴率を連発しているなんて知らなかった。週刊誌に居場所がばれ、引っ越しを余儀なくされた時も、スタッフの「運気を変えるため」という言葉を信じた。

 いつでもやめることはできたが、途中で投げ出すのは嫌だった。生きていくのに必死で、いつしか撮影されていることも頭から消えていた。

 一番つらかったのが、孤独に耐えることだった。話し相手は誰もいない。「死んだ方がましだ」と何度も思った。いきなり叫び、気付けばちゃぶ台をひっくり返していることもあった。