最も効果的な解決策は「期待」を手放すこと

では、どうすればこの問題から解放されるのでしょうか? 私が最もよいと考える方法は、自分の中にある「期待」の存在に気づき、それを手放すことです。

相手に何かを期待するのをやめることで、人間関係は少しずつラクになっていくはずです。相手の態度が急に変わったとしても、その理由をあれこれと詮索してもあまり意味はありません。

もちろん、原因が明確であれば、謝罪するなどの対処が必要です。しかし、「これが原因かもしれない」「あれかもしれない」と憶測が飛び交うような場合は、多くの場合、明確な原因はないか、こちらが勝手に関連づけているだけの可能性が高いのです。

「事実」をありのままに受け入れる

このようなとき、最もよい対処法は、「この人は、急に態度が変わることがある人なのだ」と、事実だけをありのままに受け入れることです。

ここで大切なのは、それ以上の余計な色づけをしないことです。「悪い人だ」と決めつけてしまうと、それは「この人は悪いに違いない」という新たな期待(レッテル貼り)になってしまいます。そうなると、もし相手が次に違う一面を見せたときにまた混乱してしまい、最適な行動がとれなくなる可能性があります。

まずは相手に対する期待値を下げておくこと、これが一番です。

「期待」と「距離感」の深い関係

「期待」という言葉は、「距離感」という言葉に置き換えることもできます。人間は、やはり距離が近い相手ほど、無意識に期待を寄せてしまうものです。

例えば、自分の子どもが学校に行かなくなったとしたら、親は深く悩むでしょう。これは、全く知らないどこかの子どもが学校に行かなくなったというニュースを聞くのとは、わけが違います。なぜなら、自分の子どもに対しては「学校に行ってほしい」という強い願い、つまり「期待」があるからです。

この「期待」が、ときとして私たちを苦しめます。まず最初に「子どもは学校に行かないという選択をすることもあるかもしれない」と考えておくことが大切です。そのうえで、「どうして行きたくないのか」「どうすればよいのか」を一緒に考えていくほうが、関係性がギクシャクせずに済みます。

恋人関係においても、「恋人ならこうするべきだ」といった期待が、すれ違いの原因になることは少なくありません。「どうして私との予定を優先してくれないの」という不満も、相手が同じように考えていなければ、そのギャップが関係を悪化させてしまいます。

うまくいかないときこそ「期待」を探してみよう

もし今、あなたが誰かとの人間関係に悩んでいるとしたら、そこには必ず何らかの「期待」が隠れているはずです。

その期待を見つけ出し、「一度その期待を手放してみよう」と考えてみてください。そして、まずは状況を淡々と観察してみることです。

これが、人間関係の悩みを根本的に解決するための、誰にでもできる確実な方法だと私は思います。

※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。