1万箱売れても儲からない日本初の経口中絶薬「メフィーゴパック」、赤字に苦しむ英製薬会社が“日本市場撤退”の心配も写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

賛否が渦巻いた承認

 日本で人工妊娠中絶薬は普及しないのかーー。23年5月に登場した日本初の人工妊娠中絶薬「メフィーゴパック」だが、発売以来、累計9800箱(25年7月)しか販売できていない。もう少しで「1万箱を突破」と聞けば、使われているようにも思えるが、普及率は年間の人工中絶件数の1割にも満たない。喧々諤々の議論を経て発売された新薬だが、売り出した製薬会社の台所事情は厳しい。

 メフィーゴは英国に本社を置くラインファーマ(東京)が販売している。人工中絶薬を世界25ヵ国以上で扱う専門の製薬会社だ。日本法人は20年5月に設立。21年12月に厚生労働省にメフィーゴの製造販売を申請し、23年4月に承認、同年5月に発売を開始した。経口中絶薬が91年にフランスで初承認されて先進国を中心に広まったのを考えると、実に30年以上もの「ドラッグ・ラグ」となる。

 人工中絶というと、それまで日本では手術しかなかった。スプーン状やピンセットのような器具で胎児や胎盤などの子宮内容物を掻き出す「掻爬法」と、細い筒で吸い取る「吸引法」の2種類の手術で、とくに日本では掻爬法が戦後から広く続けられてきた。ただ、子宮を傷つけるリスクが指摘されており、世界保健機関(WHO)はより安全性の高い経口中絶薬の使用を推奨している。