「子育てに疲れる」「子どもの将来に不安を感じる」「子どもを愛するよりも完璧な親になることを優先してしまう」「それが間違っているとわかっているのに、他の家族に合わせてしまう」など、子育てに苦悩する親は数多くいます。そんな親たちが考えを変え、行動を変えた育児療法がいま、話題に。アメリカで20年以上親子と向き合ってきた医師による医療現場の専門的な知識をもとにした新刊『ジョンズ・ホプキンス大学児童精神科医が教える 育児の本質』より、実用的で誰もが取り組めるシンプルかつ具体的な子育て法を紹介していきます。

【ADHDの児童精神科医が教える】「どうしてうちの子だけ違うの?」と思った親に必ず伝えていることPhoto: Adobe Stock

誰にでもエラーがある

 興味深い生物学のお話をします。私たちの体の中にDNAがあることはご存じだと思います。はしごを編んだような形をしているのがDNAであり、はしごの一つひとつが塩基対(DNA base pair)です。この塩基対が、私たちの体の中に30億個あります。

 生命が1つ誕生するには、母親の塩基対30億個と、父親の塩基対30億個、合わせて30億組を複製し続ける必要があります。この複製を、コンピュータや機械ではなく、命が行なっているのです。そのため、当然エラーは生じます。つまりこう考えてはどうでしょう。

「誰にでもエラーがある」

 エラーのない人はいません。みんなあちこちにエラーを抱えていますが、ある人はそのエラーが目立つところにあり、ある人は表に出ないところにあるだけです。ですから、我が子が少し特別で周りと異なるのは当然のことです。「どうしてうちの子だけ違うの?」と考える必要はありません。私たちにはそれぞれ違いがあり、その子は違うところが表に出やすいだけです。

 それから、私たちには遺伝子が3万から4万個程度あります。人には顔があり、手足があり、そういうところはほぼ同じですが、まったく異なる面もあります。見た目はそれぞれ異なり、才能も違います。このように、エラー以外にも変異がさらに400万から500万個あります。

 ですから、私たちはそれぞれ違うほかないのです。親も違えば、家庭環境や教育環境も異なります。宗教的な環境や社会文化的な環境も異なります。そのため、私たちは誰もがほかとは違う存在になっていくのです。

 人はみんな違うのが当然なのに、私たちはよくそれを忘れます。大人でも、1つの物差しでほかの人と比べられたらいい気はしません。子どもも同じです。違いを理解すれば、子どもに見られるあらゆる面に対してよりおおらかになれるのではないでしょうか。

 子どもは、一人ひとりみんな違ってみんな特別なのです。

(本原稿は、『ジョンズ・ホプキンス大学児童精神科医が教える 育児の本質』からの抜粋です)