「子育てに疲れる」「子どもの将来に不安を感じる」「子どもを愛するよりも完璧な親になることを優先してしまう」「それが間違っているとわかっているのに、他の家族に合わせてしまう」など、子育てに苦悩する親は数多くいます。そんな親たちが考えを変え、行動を変えた育児療法がいま、話題に。アメリカで20年以上親子と向き合ってきた医師による医療現場の専門的な知識をもとにした新刊『ジョンズ・ホプキンス大学児童精神科医が教える 育児の本質』より、実用的で誰もが取り組めるシンプルかつ具体的な子育て法を紹介していきます。

1回で上手にできる子どもはいない
親の考え方が非常に重要です。何度やってもルールを守れない場合もあるでしょう。
子どもたちは「守らない」のではなく、「守れない」のです。
子どもは未熟なので、おもちゃで遊びたい気持ちが、ルールを守ろうという気持ちに勝るのは仕方のないことです。大人も同じです。運動が大事だとわかっていてもやりません。運動の必要性を感じていないからではなく、頭ではわかっていてもうまくできないのです。
子どもたちも、ルールを無視しようとしているのではなく、守りたくてもうまく守れないのです。ですから親はこう考える必要があります。
「できるようになれば守っただろうに、まだ練習が足りないんだ。まだそこまで大きくなっていないんだね」
昨日はできたのに今日はできない、気分によってやるときとやらないときがあるというのも同じです。私たちも気持ちが乗れば運動しますが、やる気が出なければやりません。そこまでの訓練ができていないのです。
子どもたちも、ルールを一貫して守れるほど成熟していないだけです。ですから子どもができたときは褒め、できないときは「まだちょっと難しいよね? もっと練習すれば、きっとできるようになるよ」と言ってあげましょう。
そのうえで、ルールを守らなかったときにどうするか、決めたとおりにしてください。すぐにスーパーを出て家に帰る、おもちゃで遊べないようにするなどです。まだ準備ができていない状態ではそうなって当然です。このような結果を、当然の帰結(natural consequence)と呼びます。
そうすることで、「自分には練習が必要で、まだ練習の途中なんだ」と考えます。そして、「自分はまだ完全に訓練できていないから、今日はできないんだ」というのは、少し落ち着けば理解できます。たとえ納得できなくても、受け入れやすくなります。そうなれば、子どもはネガティブな思考に陥らず、むしろポジティブに考えられます。
「今日はここまで頑張れたね。10分もスーパーにいられたよ。努力しているんだね。次はもっと上手にできるよ」
問題行動を1回で改善したいという思いは捨てましょう。子どもの気分がよさそうなときに、ルールを思い出させます。守れないときは約束どおり親が状況を整理します。面倒だからとほしいものを全部買い与えるようなルール違反を犯してはいけません。親からまずルールを守り、一貫した行動を取ってください。
(本原稿は、『ジョンズ・ホプキンス大学児童精神科医が教える 育児の本質』からの抜粋です)