目先の株価に惑わされるな!
3~7年後を想像できるかが勝負!

エヌビディアやマイクロソフト、アマゾンドットコム、メタ・プラットフォームズなど大手ハイテク株を中心に、AI関連銘柄への投資が柱となっている。一方で、ビザなどの決済システム関連にも注目している。エヌビディアやマイクロソフト、アマゾンドットコム、メタ・プラットフォームズなど大手ハイテク株を中心に、AI関連銘柄への投資が柱となっている。一方で、ビザなどの決済システム関連にも注目している。
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――世界の成長株に投資する「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド」は、上位10銘柄でポートフォリオ全体の6割近くを占めるなど、大胆な投資戦略が際立っています。その結果、S&P500を大きく上回る好成績を収めています。お二人のチームは、どのようにして有望な投資先を見つけ出しているのでしょうか。

ベイカー 私たちの運用体制は少しユニークで、2人による共同ポートフォリオという形をとっています。それぞれが独自にリサーチを行いますが、最終的に組み入れる銘柄は、2人の意見が致し、ともに強い確信を持てたものだけです。このプロセスを経ることで投資対象は自然と絞り込まれ、結果として“集中度の高い”ポートフォリオになります。これは無謀な賭けではなく、徹底したリサーチの積み重ねから導かれる論理的な結論なのです。

ウィーバー チームの連携は非常に緊密です。少人数の体制なので、ほぼ毎日一緒に昼食をとりながら議論を重ねています。絶え間ない情報共有とアイデアのぶつけ合いが、投資判断の精度を高めるうえで欠かせない要素になっています。

――銘柄を分析する際、最も重視している点は何でしょうか。

ベイカーさんいわく「AI時代に勝つのは、変革を恐れないリーダーが率いる企業」。ベイカーさんいわく「AI時代に勝つのは、変革を恐れないリーダーが率いる企業」。
Photo by Kuninobu Akutsu

ベイカー 突き詰めればやはり“経営陣”です。私たちが求めているのは、特定のスター経営者ではありません。重要なのは、業界を問わず顧客のニーズを深く理解し、新しい技術の導入をためらわず、時には痛みを伴う組織改革を断行できる「勇気あるリーダー」です。そうした経営陣がいる企業こそ、AIのような大きな変革期を乗り越え、勝ち残っていけると確信しています。

 その確信度を測る一つの方法として、経営陣の報酬体系を分析することがあります。たとえば、野心的な売上目標を達成した場合にCEOの報酬が4、5倍に跳ね上がるようなプランがあれば、それは経営陣が自社の戦略に強い自信を持っている強力なシグナルと捉えることができます。

――投資判断の時間軸についても伺います。運用レポートには「3~7年先の企業価値を見据えて成長銘柄を発掘する」とありますが、なぜ“3~7年”という期間を重視されているのでしょうか。

ウィーバー 企業の競争優位性や事業モデルの持続性を見極めるうえで最適だと考えているからです。株式市場は金利や原油価格といった短期的な要因の影響を受けがちですが、AIのようなメガトレンドが成果として結実し、企業が確固たる競争優位を築くまでには数年単位の時間を要します。

 だからこそ私たちは3~7年という時間軸を持つことで、短期的な市場のノイズに惑わされることなく、「どの企業が真の勝者になるのか」を見極められるのです。

――一方で、投資には“出口戦略”も欠かせません。どのような場合に保有銘柄を売却するのでしょうか。

ベイカー 売却のルールはシンプルで、理由は2つしかありません。第一は「当初描いた投資シナリオが崩れた場合」です。たとえば、最近は自動車向け半導体メーカーのケースがそうでした。スマートカーやEVの普及が加速し、需要が急増すると見込んで投資しましたが、新政権によるEV支援策の縮小懸念や、自動車業界全体の構造的な不安が浮上しました。その結果、「想定したほどの成長は望めない」と判断したのです。これは一時的な景気の波ではなく、長期的な成長ストーリーそのものが揺らいだと判断したため、売却を決断しました。 

 第二に、「投資シナリオが実現し、株価が想定した価値に達した場合」です。これは運用者にとって喜ばしい展開です。たとえば、エヌビディアやマイクロソフトなどの“マグニフィセント・セブン*”と呼ばれる銘柄群には、市場が注目する前から投資していました。その後、AI需要の高まりなどを背景に株価が想定を大きく上回り、リスク管理の観点から一部を売却しました。株価が本来の価値を十分に織り込み、「割安感がなくなった」と判断したときに利益を確定するのも、私たちの重要なルールの一つです。

*GAFAM(ガーファム)と呼ばれるグーグル(Google)、アップル(Apple)、メタ(Meta Platforms、旧Facebook)、アマゾン・ドット・コム(Amazon.Com)、マイクロソフト(Microsoft)の5社に、テスラ(Tesla)とエヌビディア(NVIDIA)を加えた7社を指す。1960年代にヒットした米西部劇映画「The Magnificent Seven(荒野の七人)」にちなんで名付けられた。