通行人は拍手のあと、スマートに1ドル札をチップとして渡す。地下鉄ではミュージシャンがアコーディオンを弾きながら、車両から車両へと渡り歩き、チップを集めている。

 日本では、こうした「投げ銭」文化が途絶えて久しい。昭和の半ばくらいまでは大道芸人に紙芝居、流しのギター弾きなど、投げ銭で暮らしている人は少なくなかった。令和の時代の今でも活動している人はいるが、高齢だったりスポンサーがいたり、ほぼ文化遺産のような存在だ。

 日本には、投げ銭で稼がなくても効率的にお金をもらえて、安定した仕事がたくさんある。社会が豊かな証拠なのだろうけど、芸の腕前次第でそこそこ日銭をもらえる投げ銭プレイヤーは、資格や学歴や経験のない者がチャンスを得られる魅力的な仕事のひとつだ。細々とでも、残っていくべきだと思う。

 こうした投げ銭文化が、デジタルテクノロジーで進化を遂げたのが、クラウドファンディングだ。

信用さえ得られていれば
お金がなくても生きていける

 日本でクラファンが広まったきっかけは、2011年の東日本大震災といわれる。

 全国各地で募金や寄付が行われる中、被災地の復興ボランティアを手がけるNPO法人がクラファンで資金を調達し、活動を続けることができた。

 近年は、書籍の著者と会えるなどの返礼を設定した、新たなクラファン「価格自由」も登場した。

 僕は2019年7月に出した著書『ハッタリの流儀 ソーシャル時代の新貨幣である「影響力」と「信用」を集める方法』で利用し、1億5000万円ほどを募ることができた。返礼品として「一緒にマージャンする権利」(10万円)、「ホリエモンチャンネル出演権」(50万円)、「LINE交換」(100万円)、「1日密着権利」(300万円)、「結婚式に参列してもらう権利」(1000万円)などを設定したところ、約1億5000万円が集まった。

 技術革新によって、顔の見えない者同士が直接つながる「P2P=Peer to Peer(サーバーとクライアントといった区別なしに、接続されたコンピューター同士が同格で通信し合うネットワーク形態)」は、ついに実現した。